かぜへの抗菌薬、医師の半数超が「今後は減らす」
医師3981人に聞く「かぜ患者への抗菌薬処方」
小板橋律子=日経メディカル
いわゆる普通の“かぜ”は、ウイルスが原因なので、抗菌薬(抗生物質)を飲んでも効果がない―。このことは、医療関係者以外の間でもだいぶ知られるようになってきました。それでも、医療の現場では、長年の慣習や、「肺炎などの細菌感染症の合併を予防する効果」を期待して、かぜに抗菌薬を処方する医師が少なからず存在します。また、患者自身にも、かぜのときに抗菌薬の処方を求める傾向が根強く残っています。
抗菌薬の安易な使用は、世界的に問題になっている、薬剤耐性菌(抗菌薬が効かない細菌)を増やすことにつながります。そこで厚生労働省は近年、医師に対して「抗菌薬の適正使用」をより厳格に求めるようになってきました。
そうした流れが医師の処方にどのような影響を与えているのか、約4000人の医師が回答した日経メディカルの調査結果の一部をご紹介します(編集部)。
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厚生労働省は今年6月、薬剤耐性菌を減らすための「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」の一環で、かぜ患者に対して抗菌薬を処方しないよう医師に求める「抗微生物薬適正使用の手引き」を公開した。その後、医療現場におけるかぜ患者への抗菌薬処方に変化はあったのか。日経メディカル Onlineの医師会員を対象に行った調査の結果を紹介する。
アンケートでは、かぜ症候群(のどの痛み、咳、鼻水、微熱、倦怠感を主体とした疾患で、明らかな細菌性咽頭炎・扁桃炎は除く)に対する経口抗菌薬の適正使用について聞いた。その結果、適正使用を「厳密に実施している」もしくは「極力配慮している」と回答した医師は合わせて55.2%で、「考慮したことはない」は10.0%と限定的だった(図1)。この傾向は、病院勤務医と開業医に分けて集計しても差はなかった。

かぜ患者に対して経口抗菌薬を投与する割合を聞いた設問では、「抗菌薬を全く処方しない」(0%)の回答は全体で17.6%だった。就業形態別に見ると、開業医11.1%、病院勤務医19.8%となり、開業医に比べて病院勤務医でかぜ患者に経口抗菌薬を処方しない医師が多い傾向が見られた。
また、経口抗菌薬を処方するかぜ患者の割合が30%未満と回答した医師が8割を越えており、大半の医師がかぜ患者には限定的に抗菌薬を使用している実態が明らかになった。この傾向は、開業医に比べて病院勤務医でより強かった(図2)。

