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たった1人のはしか患者から大流行が起きる理由

コンサート会場から爆発的流行への警戒強まる

 高橋義彦=医学ライター

 2016年8月14日に千葉県・幕張メッセで開かれたジャスティン・ビーバーさんのコンサートに来場した19歳の男性が麻疹(ましん)に感染していたことが、19日に兵庫県西宮市内の医療機関で判明した。他の来場者などに感染した可能性があるとして、厚生労働省は24日、患者が受診する可能性のある医療機関に注意を呼びかけるよう、全国の自治体に要請した。

 なぜたった1人の麻疹患者がコンサートに行っただけで、ここまで大きな騒ぎになるのだろうか。その理由は、麻疹の感染力の強さにある。

感染者1人が20人前後に感染させる力を持つ

 「はしか」とも呼ばれる麻疹は、麻疹ウイルスによって起こる急性の全身感染症だ。患者のくしゃみ飛沫などに含まれるウイルスを鼻や口から吸いこんで感染する「飛沫感染」、ウイルスが付着した患者の体や物に触れることで感染する「接触感染」のほか、空気中に漂うウイルスの飛沫核(飛沫の水分が乾燥した微粒子)を吸い込む「空気感染」でも感染する。

 このうち最も感染を広げやすいのは空気感染だ。麻疹の免疫がない集団に1人の発症者がいたとすると、16~21人の人が感染してしまう。インフルエンザ(2~3人)や風疹(7~9人)と比べても突出した数字で、その感染力の強さがうかがえる(下表、*1)。このため、閉鎖された空間であるコンサート会場で、一気に麻疹の感染が広がった恐れがあるのだ。

代表的な感染症の基本再生産数
感 染 症基本再生産数
麻疹(はしか)16~21
ムンプス(おたふくかぜ)11~14
風疹7~9
水痘(水ぼうそう)8~10
ポリオ5~7
天然痘5~7
百日咳16~21
インフルエンザ2~3
基本再生産数(R0):その感染症に免疫を持たない集団において、1人の感染者が感染させる平均人数

免疫を持っていないとほぼ100%が発症

 麻疹ウイルスは、これまで麻疹にかかったことのない人、麻疹ワクチンを接種していない人など、麻疹に免疫のない人が感染すると、ほぼ100%発症する。

 感染した場合、約10日~12日間の潜伏期間を経て、発熱や咳、鼻水など、風邪のような症状が現れる。2~3日経つと39℃以上の高熱と発疹がみられるようになる。発疹は耳の後ろ、首、額から始まり、全身に広がる。最初は鮮やかな赤い色の平らな皮疹だが、徐々に膨らみ、他の皮疹と一体化して大きくなっていく。

 麻疹で問題となるのは合併症だ。約3割の麻疹患者が合併症を起こすといわれる。頻度の高い中耳炎クループ症候群(喉が炎症で腫れ気道が狭くなる)をはじめ、さまざまな合併症が知られているが、特に注意しなければならないのが、肺炎脳炎だ。麻疹の死亡率は0.1~0.2%で、亡くなる原因のほとんどが肺炎か脳炎となっている。脳炎を起こすと、20~40%で後遺症を残す(*2)。

*1 国立感染症研究所 感染症研究センター 平成20年度危機管理研修会 プログラム 4「わが国におけるプレパンデミックワクチンの開発の現状と臨床研究」
*2 国立感染症研究所 感染症情報センター 麻疹の現状と今後の麻疹対策について(2002年10月)

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