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世界初、失われた陰茎が移植で回復

脳死ドナーからの移植後3カ月で全ての機能が回復

 大西淳子=医学ジャーナリスト

 伝統儀式に起因する陰茎切除が年間にどのくらい行われているかに関する正式なデータはありませんが、ある研究は、東ケープ州(2011年の人口は656万人)だけでも、多い年には55人が切除手術を受けていると述べています。専門家は、南アフリカ共和国全体では、毎年250人程度に陰茎切除が行われていると推測しています。陰茎が機能しないばかりか、下腹部の外見が大きく損なわれていることは、18~19歳の男性の心に深い傷を負わせます。切除後に自殺した若者もいます。

 van der Merwe氏らは、おそらく陰茎移植のニーズが世界のどの国よりも高い南アフリカ共和国で、陰茎移植の技術を確立するための研究を2010年から進めており、今回の手術もその一環として行われました。同様の手術があと9人の患者に対して行われることになっています。研究者たちは、将来的には、陰茎移植は陰茎がんの切除を受けた患者などにも適用できる可能性があると考えています。

移植後3カ月以内に全ての機能が正常化

 さて、今回の脳死ドナーは、心臓、肺、腎臓、肝臓、皮膚、角膜とともに、陰茎も提供してくれました。医師たちは、顕微手術により、提供された陰茎と患者の陰茎の断端の、いずれも直径1~2mmの血管と神経をつなぎ、さらに尿道と海綿体もつなぎました。

 移植手術の目的は、陰茎が排尿機能と生殖機能の全てを回復することにあり、医師たちは、完全に機能するようになるまでには2年程度かかると予想していましたが、3カ月以内に全ての機能が正常化しました。この結果は、術後に速やかな機能回復が可能であることを証明するとともに、若い男性患者の人生を大きく変えました。

免疫抑制剤でがんや感染症のリスクが上昇

 が、患者は、移植された陰茎に対する拒絶反応を防ぐために、生涯にわたって免疫抑制剤を使用しなければなりません。免疫抑制剤には何種類かありますが、どれを使用しても、様々な副作用(腎臓、心臓への悪影響や、糖尿病、高血圧リスクの上昇、食欲不振、吐き気、下痢など)が生じる可能性があります。もちろん免疫を抑制するので、感染症にかかりやすくなります。そのため、ウイルス性のがん(一部のリンパ腫や、肝炎ウイルスによる肝臓がんなど)を発症するリスクも上昇します。さらに近年、臓器移植後の患者では、ウイルス感染とは無関係な、肺がんや腎臓がん、皮膚がん、甲状腺がんなどのリスクも高まることが明らかになっています。全体として、移植患者のがん発症リスクは、一般の人々の2~4倍になると報告されています(*2)。

*2 Engels EA, et al. Spectrum of Cancer Risk Among US Solid Organ Transplant Recipients. JAMA 2011;306(17):1891-1901. doi:10.1001/jama.2011.1592.
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