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本当に恐い母乳のネット購入

汚染に加え、様々な病原体もノーチェックで混入

 大西淳子=医学ジャーナリスト

 先進国では、子どもに十分な母乳を与えられないと気づいた母親の4人に3人が、インターネットを利用して対応策を探している。ネットには、母乳至上主義的な情報や、粉ミルクの欠点を強調するような情報が散見されるとともに、母乳の売買を斡旋するサイトも複数認められる。そうしたサイトは、母乳購入に伴うリスクを告知していないが、実際には、子どもの健康が脅かされる危険性が高い。

 母乳のネット市場は、特に米国で急速に拡大している。利用者は主に、母乳バンク(後述)を利用するための条件は満たさないが、完全母乳育児をめざす母親だ。このほか、がん患者や、体を鍛えることに熱心な男性なども含まれるようだ(そうした人々に対する母乳の利益は不明)。

 母乳バンクは、病原体が母乳に移行する病気に罹っていない提供者を選び、母乳を低温殺菌することによって安全性を高めている。しかし、ネットを通じて販売される母乳は、搾乳され凍結保存されているだけであるため、購入した母乳に起因する感染症が発生する可能性や、母乳が細菌に汚染されている可能性、母乳に何かが加えられている可能性がある。

 実際に、ネット購入した母乳中の21%がサイトメガロウイルス陽性だったと報告している研究がある。また、ネット販売されていた母乳101パックのうち92パックから細菌が検出されたという。搾乳時の衛生状態や、保管と輸送の環境が悪いことが、細菌の増殖を引き起こすと考えられる。

 さらに、妊婦が飲酒、喫煙をしていても、カフェインを含む飲料を多飲していても、購入者には知るよしもない。アルコール、ニコチン、カフェインは母乳に移行する。

 販売されていた母乳からビスフェノールA(後述)や処方薬、違法薬物が検出された例や、体積を増やすために水や牛乳、豆乳などが加えられていた例も報告されている。

Steele S, et al. Risks of the unregulated market in human breast milk. BMJ 2015;350:h1485 doi: 10.1136/bmj.h1485

提供者の肝炎ウイルス、HIV、梅毒なども母乳に移行

 母乳は、非常に簡単に言ってしまえば、赤血球を含まない血液のようなものです。輸血によって感染する病気があること、ゆえに、献血された血液は様々な検査や処理を経て患者のもとに届くことはご存じでしょう。安全性を考えるなら、母乳も同様に扱う必要があり、搾乳方法とその後の保管環境を考えると、低温殺菌も必要と考えられます。

 提供者の女性が感染していると母乳に病原体が移行する可能性があるのは、サイトメガロウイルス(CMV)、B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、梅毒(病原体は梅毒トレポネーマ)、風疹ウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)、ムンプス(おたふく風邪)ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)などです。HIV感染については、現在のところ、薬物療法でエイズ発症を抑制することはできますが、完全に直す方法は確立されていません。HTLVに感染すると5%程度が白血病になります。サイトメガロウイルスは、早産児が感染すると深刻な症状を引き起こす可能性があります。

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