暑さが和らいでも危険!運動時の熱中症
「猛暑日ではないから大丈夫」といった油断は禁物
塚越小枝子=フリーライター
今年7月には熱中症で搬送される人の数が過去最高を記録した。記録的な酷暑を抜け、若干気温が低くなってきたと感じられるこの頃。しかし、熱中症は気温だけで起こるわけではなく、油断は禁物だ。特に体が大量の熱をつくり出す運動時は、より熱中症の危険が高まりやすい。
大塚製薬は、1991年から日本体育協会と連携し、運動時の熱中症対策などスポーツ医・科学研究に基づく啓発活動を行ってきた。同社ニュートラシューティカルズ事業部の販売促進部学術担当で、建設業等における熱中症予防指導員でもある只野健太郎さんに、運動中の熱中症対策と正しい水分補給について聞いた。
運動中の熱中症は9月以降も起こる!

日本全体での運動中に限った熱中症事故の実態は明らかになっていないが、関連するいくつかのデータを見てみると、例えば東京都の中高生の熱中症発生総数のうち運動中の熱中症が占める割合は、ここ数年35~45%で推移している(「熱中症の現状と予防 2015」杏林書院 中高生の運動中の熱中症[東京都]より)。「私たちが熱中症予防の啓発活動を始めた当初に比べて、熱中症は社会に広く知られるようになったものの、まだ熱中症による事故が毎年一定の割合で発生しています。運動指導者や選手に予防の知識をもっと普及させ、これをゼロにすることをめざしています」と、只野さんは話す。
では、どのような運動をしているときに熱中症になることが多いのだろうか。学校管理下での運動中の熱中症死亡事故の内訳を見てみると、種目別では、野球、ラグビー、サッカーなど、炎天下で長時間動くようなスポーツに多いことが分かる。ただ、柔道、剣道をしているときなど、室内で起こるケースも少なくない。
発生時期は7月下旬~8月上旬をピークに夏場に集中しているものの、酷暑の時期を過ぎた9月でも発生している。さらに時間帯別で見ると、午前10時以前や夕方の18時以降にも発生しており、このことから「猛暑日ではないから大丈夫」「室内だから、早朝や夕方だから大丈夫」といった油断は禁物といえる(図1)。
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