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医師がてんかんになったら、どうなる?

 中里信和(東北大学てんかん科教授)

神経系専門医がてんかんになったら

 神経系専門医がてんかんになった場合、話はますますややこしくなります。世間一般の感覚では、「神経内科、脳神経外科、精神科医、小児神経科などの医師はてんかんに詳しいはず」と思うでしょう。これが危ないのです。

 30歳代のCさんは、神経内科の専門医を取得した頃、当直明けに全身けいれんを初発したことから、抗てんかん薬を服用しています。実はまだ全身けいれんの発作が起こることがあるのですが、年に数回、それも夜間の睡眠中だけであったために治療薬を変えることなく経過しました。ある日、勤務中に突然動作が停止し、手をモゾモゾと動かしたり、口をモグモグさせる発作を同僚の看護師が目撃します。そこでようやく、側頭葉てんかんと診断されたそうです。実は発症直後に同僚のてんかん専門医が診察をしていたのですが、この典型的な複雑部分発作の存在を聴取していなかったことが判明しました。この同僚は、相手(Cさん)も神経内科医であったことから、わざわざ聴取しなかったと弁明していました。

 本来、てんかん専門外来では患者から根掘り葉掘り聞き出すことが大切です。全身けいれんは診断の役にはたちません。神経系専門医も含め、多くの医師は全身けいれんの有無のみに基づいて診療しているのが現実です。

てんかん専門医がてんかんになると

 では、「てんかん専門医がてんかんになったら」どうでしょうか? 幸い私は診察した経験がありませんが、決して油断はできないでしょう。発作の場に居合わせた人からの詳細な病歴聴取はもちろんですが、できることなら複数の専門医に診察してもらうことが必要です。そして確定診断に至らない場合には、ビデオ脳波モニタリング検査を迷わず受けるべきでしょう。

 ここまでの話をまとめると、患者が医師だろうが医療関係者だろうが、てんかん専門診療においては素人を相手にしていると思うことが大切です。てんかんの多様性を全部詳しく把握している医師はいないと思った方が正解です。

 え!「私(てんかん科の教授)がてんかんになると」どうなるかって? もちろん自己判断せず、スタッフのお世話になります。恥ずかしくても脳波検査や心理検査も受けますよ。転んでもただでは起き上がらない私ですから、きっと自分の闘病経験を活かして啓発活動に邁進するに違いありません。ピンチをチャンスに。「てんかんがあろうがなかろうがベストの人生を自分で作り出せ」というのが私たちてんかん科のスローガンなのですから。

中里信和(なかさとのぶかず)氏
東北大学てんかん科教授
中里信和(なかさとのぶかず)氏 1984年東北大学医学部卒。東北大学脳神経外科研修医・同助手、カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部研究員、広南病院臨床研究部長・同副院長などを経て、2010年より現職。国際てんかん連盟ガイドライン委員会委員。
この記事は、日経メディカルからの転載です。

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