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炎天下での熱中症予防のコツ。頭と首の冷却カギ、服は黒より白を

熱中症を衣服の工夫で防ぐコツ(後編)

 塚越小枝子=フリーライター

着圧の効果を利用して血流・発汗をコントロール

 衣服の着圧を利用することで、体を循環する血液の量や発汗をコントロールできる可能性もあるという。

 「血液や組織(間質)液などの人間の体液循環は、姿勢を変えるだけで毛細血管にかかる圧力が変化して分布が大きく違ってきます。立った姿勢の場合、寝た姿勢よりも体液の分布が下半身に多くなり、上半身は少なくなります。それとともに、心臓へ戻る静脈血が少なくなります。暑いときは皮膚表面の汗腺から積極的に熱を外に逃がすため皮膚血流が多くなり、さらに下半身にたまる静脈血が多くなることも加わって、体液循環の変化がより大きくなります」(平田さん)

 姿勢だけでも心臓へ戻る血液量は違ってくるが、汗をかくと物理的にも体内の水分量が外に出ていって減るため、水分補給をしなければ心臓に戻る血流量がさらに減って脱水になる。心臓に戻る血液が足りなくなるレベルまでくると、皮膚血流量の増加は抑えられる。つまり、体温調節が犠牲になるということだ。熱放散の増加が抑えられ、熱中症のリスクが高まる。

 これに対して、下半身に広く圧迫を加えると、心臓へ戻る静脈血が増えるため心臓の1回拍出量が増えて、心拍数が低下することが実験で確かめられている。つまり、圧力によって血液が心臓へ戻りやすくなる。下半身を適度に締め付けることによって毛細血管の外側へ出た体液が血管の中へ押し戻され、それにより少しでも循環する血液量が保たれ、上記のような脱水に伴う体温上昇を抑えられる可能性があるということだ。

着圧ストッキングなどで下半身に圧迫を加えると、発汗の抑制につながる可能性もある。写真はイメージ=(c)Jean-Paul CHASSENET-123RF

 「ただし、着圧ソックスやタイツなどを着用すると、それにより熱そのものが逃げにくくなるというマイナス面も考えられます。網タイツ状になったものなど、熱放散が抑えられるマイナス面より圧力による血液量増加のプラス効果が大きくなるものを選ぶ必要があります」(平田さん)

 圧迫は条件次第で発汗の抑制につながることもあれば、促進につながることもある。体調や場面に応じて調節する知恵が求められそうだ。

 また、「半側発汗」といって、皮膚に対して圧迫を加えると、圧迫を加えられた側の汗は減って、反対側の汗が代償する形で増える現象が起こることが知られている。補正下着などで下半身に圧力が加わると顔や上半身の汗が多くなるが、逆に、胸部あたりを圧迫すると、顔の汗が抑えられ、下半身に多くなる(図2)。少なくとも「汗は体に加わった圧力の影響を受ける」ということは覚えておくとよいだろう。

黄色い部分が発汗抑制が起こる範囲。左は第4~5肋骨上、中央は第9~10肋骨上、右は腸骨稜上を押さえた場合。(平田さん提供資料を基に作成)
[画像のクリックで拡大表示]

体が暑さに慣れると汗と体温上昇は抑えられる

 平田さんらは、季節ごとに体温調節反応がどのように変化するかも調べており、体が寒さに適応している冬から春にかけては、汗をかいても皮膚血流量がなかなか増えず体から熱が出ていきにくいが、体が暑さに慣れる9月ごろは、皮膚血流量が多くなり熱を体の深部から表面に運ぶ能力が高まる一方で、マイルドな熱負荷では体温上昇が最も小さくなることが確かめられているという。冬や春に比べると少ない汗でも十分な体温調節を行える「夏仕様」の体になっているということだ。

 「体温調節は衣服だけでなく体の条件により左右されます。日ごろの運動習慣や入浴習慣などで、本格的に暑くなる前に、皮膚血流量が多くなり、早く汗をかける暑熱耐性の高い体になっているかどうかも熱中症予防に影響します。ただし、酷暑の中で無理に運動するのはかえって危険です。日ごろから栄養や運動、十分な睡眠などに気をつけ、健康を維持することが大切です」(平田さん)

 人間の体温調節の仕組みを理解して、さまざまな工夫で賢く暑さを乗り切ろう。

(図版作成 増田真一)

平田耕造(ひらた こうぞう)さん
神戸女子大学家政学部教授。医学博士
平田耕造(ひらた こうぞう)さん 東京学芸大学大学院修了後、金沢大学医学部生理学第一講座助手、講師を経て1989年4月から神戸女子大学家政学部助教授、93年から教授、2013年4月から副学長。専門は環境生理学。気象条件の急変や室温差に対し、衣服はポータブルな快適環境をつくるもの。衣服内や皮膚の温湿度・皮膚血流や発汗等を指標として、特に皮膚の動静脈吻合(AVA)血流に注目して研究に取り組む。

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