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炎天下での熱中症予防のコツ。頭と首の冷却カギ、服は黒より白を

熱中症を衣服の工夫で防ぐコツ(後編)

 塚越小枝子=フリーライター

 「例えばいつもウールの毛皮で覆われているヒツジの場合、暑いときはパンティングと呼ばれる浅くて速い呼吸によって鼻から水蒸気を蒸発させ、鼻の粘膜で冷やされた静脈血が頭蓋底の膨らんだ静脈部分に集まります。脳へ向かう動脈は膨らんだ静脈を貫通し、網目状に枝分かれした動脈の細い血管部分が静脈に包み込まれることで、強力な対向流熱交換(ラジエーターの役割)が行われ、熱い動脈血が冷やされて、脳内に送られる血液の温度は2~3℃も下がります」(平田さん)

 人間の選択的脳冷却については議論があるが、「人間は汗を蒸発させることによって皮膚温が下がり、皮下にある静脈を流れる血液の温度も下がります。人間にはヒツジのような特別な静脈はないものの、脳内に海綿静脈洞(かいめんじょうみゃくとう)という部分があり、頭皮や顔面で冷えた静脈血がここに流れ込み、脳温を下げるのに貢献しているといわれています。海綿静脈洞では、心臓から脳へ向かう動脈と密接しているのですが、これはおそらく、冷えた静脈血と熱い動脈血が熱交換をするためではないかと思われます」と平田さんは言う。

帽子はつばが大きく、通気性が高いものがいい。写真はイメージ=(c)ittichai anusarn-123RF

 脳細胞が最も高体温に弱いことを考えても、外側から頭部を優先的に冷やすことはとても有効だという。頭部の熱を遮る工夫の一つに帽子があるが、汗をかいたまま帽子をかぶりっぱなしだと、汗の蒸発が抑えられるので選択的脳冷却の効果は抑制されて脳の温度が上昇してしまい、熱中症のリスクが高まることに注意したい。

 帽子は、太陽光からの輻射熱を遮る効果を期待するのであれば、つばが大きく顔全体が日陰になるものがよい。また、通気性が高く、できるだけ多くの汗を蒸発させるなど、選択的脳冷却効果の高いものが望ましい。反対に通気性の低い帽子をかぶりっぱなしでは汗の蒸発は期待できず、選択的脳冷却も効かない。汗をかいた後はときどき帽子を脱いで汗を蒸発させることが大切だ。

 また、脳へ流れる血流を冷やすために、首を冷却グッズなどで冷やすのも効果的だ。首には太い頸動脈が通っており、そこから皮膚表面へ常に熱が移動して表面温度が高くなる分、多量の熱が放散されている。「首の皮膚は冷たさに対する感度も高いので、首の冷却効果は大きく、有効です」(平田さん)

3 男女問わず日傘を利用する
日傘をさすことによって、暑さの感じ方はかなり違ってくる。写真はイメージ=(c)BlueOrange Studio-123RF

 平田さんらは色や素材の違う各種の日傘を比較して、日傘の紫外線遮蔽効果と遮熱効果を明らかにする実験を行った(*1)。日傘の傘下20cmのところをWBGT(暑さ指数)計を用いて測定した結果、日傘なしに比べて日傘があるほうが2℃近くWBGTを抑えられた。

 また、通販などで販売されている、傘の中に扇風機が付いている日傘についても調べている。扇風機付きの日傘を利用して人体への効果を調べた結果、体温上昇が抑えられ、発汗量も減少して体の負担が軽減していることが分かった。人が感じる「主観的な快適感」も扇風機付き日傘のほうが高かった。

 扇風機付きの日傘を持っている人は少ないかもしれないが、それに限らず、日傘には紫外線を遮る効果だけでなく、熱線そのものを遮り、熱中症を予防する効果も期待できそうだ。なお、この実験では銀色の日傘が最も熱線を遮る効果があった(*2)。

 また、別の実験でも、日傘なし・黒球温度(*3)30℃という条件の下で、白い日傘の下の黒球温度は21.5℃、黒は21.1℃、水色は21.2℃、銀色は19.6℃という結果で、太陽光を反射する銀色の日傘に高い遮熱効果を示す可能性が見られた(*4)。いずれにしても日傘をさすことによって、暑さの感じ方はかなり違いそうだ。

 「日傘の効果は絶大。男女問わず日傘を利用することをお勧めします」(平田さん)

*1 謝雅竹、平田耕造.日傘の紫外線遮蔽およびWBGT抑制効果.日本生気象学会雑誌. 2012;49(3):S49

*2 厳密には、黒と白はポリエステル製、銀色はナイロン製だったが、「この素材の違いが紫外線遮蔽効果や遮熱効果に大きな影響を与えたとは考えにくい」と平田さんは話す。

*3 黒球温度は、黒色に塗装された薄い銅板の球の中心に温度計を入れて観測する。直射日光にさらされた状態での球の中の平衡温度であり、弱風時に日なたにおける体感温度と相関している。

*4 平田耕造、大谷由依、片山裕香、謝雅竹.日傘における紫外線、可視光線および日射の遮蔽効果. 日本繊維製品消費科学会2011年年次大会・研究発表要旨:p134、2011年6月25~26日(於:武庫川女子大学)

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