屋外でマダニに刺されると牛肉アレルギーに!?
海や山のレジャーがきっかけになる「遅発性アナフィラキシー」の怖さ【その1】
大西淳子=医学ジャーナリスト
「食物アレルギーは子どもの病気」と思っていませんか。また、重症の食物アレルギー患者を時として死に至らしめるアナフィラキシーについては、「原因となる食物を食べた直後に呼吸困難になって、救急車が間に合わなければ死亡する病気」と考えていませんか。
近年、そうしたイメージを覆す、「遅発性アナフィラキシー」の患者が日本でも見られるようになりました。患者はほとんどが成人で、思いもかけない経緯をたどって、牛肉や納豆に対するアナフィラキシーを発症するようです。遅発性アナフィラキシー、人ごとではありません。
食物アレルギーとは
最初に食物アレルギーについて簡単に説明します。特定の食物に対して体の免疫系が過剰に反応するために、蕁麻疹、下痢、嘔吐、咳、呼吸困難などの症状が現れる病気を食物アレルギーといいます。過剰反応を起こすかどうかには、持って生まれた体質が大きく関係しており、同じ食物に何度接触してもアレルギー症状を起こさない人も多くいます。
特定の食物を食べるたびに症状が出るようになるまでには、原因となる食物との接触が複数回必要です。食べる以外に、粉末を吸い込む、皮膚または粘膜に付着する、といったルートでも食物アレルギーになることがわかっています。「これまで食べても異常がなかったから、この食品ではアレルギーは起こさない」とは言い切れないのが食物アレルギーの怖いところです。
アナフィラキシーとは
食物アレルギーに特徴的な、蕁麻疹などの「皮膚症状」、呼吸困難などの「呼吸器症状」、唇の腫れなどの「粘膜症状」、嘔吐や下痢などの「消化器症状」のいずれか2つ以上が発生した場合をアナフィラキシーと呼び、さらに死亡の危険性がある血圧低下などの深刻な症状が現れると、アナフィラキシー・ショックと判断されます。
遅発性アナフィラキシーとは
アナフィラキシーは通常、原因となる食物を口にして数分後から2時間以内に発生するため、直前に食べたものの中から原因を探すことになります。しかし遅発性の場合には、6時間程度から半日以上経過してから症状が現れるため、食事と症状の関係に気づくことは容易ではありません。そうした遅発性アナフィラキシーを引き起こす食物として近年注目を集めているのが、獣肉(牛肉や豚肉)と納豆です。