これからのオンライン診療はどうなるの?
第2回 オンライン診療の未来と課題
梅方久仁子=ライター
オンライン診療に詳しい武藤真祐医師へのインタビュー。第2回のテーマは、オンライン診療の将来だ。オンライン診療によって医療はどう変わるのか。超高齢社会では、どんな医療が求められるのか。オンライン診療が広まるには、何が必要か。武藤医師に熱い想いを語っていただいた。
世の中で起こっている変化を医療界に導入したい

武藤先生は、なぜオンライン診療に取り組むようになったのですか。
武藤 私は、今の医療は100%完成されたものではなく、もっと改善していく余地があると思っています。そこで不思議なのは、世の中がICT(情報通信技術)でこんなに便利になっているのに、なぜ医療では活用されないのかということです。世の中の変化を医療界に導入したいのです。中から変えようとするだけでは難しそうなので、外の世界のことを知ろうと考えて、一旦医療界を飛び出してコンサルタント会社で働くこともしました。
今の医療には大きな課題が3つあると思います。1つは、医療者と患者とのコミュニケーションの問題。患者さんや家族が本当に伝えたいことが、私たち医療者側にうまく伝わっていないかもしれないと感じます。ICTは、コミュニケーションを支援できるのではないでしょうか。
2つめはアクセスの問題。これから高齢者がますます増えて在宅医療のニーズが高まっても、在宅医療を行う医師が増えなければ、医療へのアクセスが難しくなってきます。オンライン診療で効率化すれば、より多くの人に医療を提供できるのではないでしょうか。
3つめは、私たちは「アドヒアランス」(*1)と呼んでいますが、治療方針を決めたら、それをどう着実に実施するかという問題。せっかく薬を処方しても飲み忘れてしまうと効果がありません。ICTは、薬の飲み忘れや生活習慣の改善をサポートできるのではないでしょうか。
今の医療でできていないことや今後できなくなることが、ICTを使えば補えるのではないか。それなら早くやろうと思って、オンライン診療の事業に取り組み始めました。「まず議論して」というやり方もありますが、私は「議論するよりともかくやってみよう」というタイプですから。
オンライン診療に限らず、医療のICT化を進めようということですね。
武藤 そうです。在宅診療クリニックを起ち上げたときも、ICTは積極的に活用しました。在宅診療では、24時間体制を構築するために、スタッフの連携が欠かせません。ICTは、患者の情報をスタッフ間で共有し連携を進めるためには、必須のツールです。
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