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オンライン診療の時代がやってきた

第1回 オンライン診療って、どんなもの?

 梅方久仁子=ライター

ネットを通じて医療行為を行う「オンライン診療」をご存じだろうか? 診療報酬が定められ、健康保険でオンライン診療が受けられる時代がやってきた。では、そもそもどんなものなのか。どんなメリットとデメリットがあるのか。オンライン診療の普及に力を注ぐ医師に、その具体像について聞いてみた。

 とうとう医療もオンラインの時代がやってきた。2018(平成30)年度診療報酬改定で、初めてオンライン診療に点数がつき、健康保険でオンライン診療が受けられるようになった。また、厚生労働省は、オンライン診療を実施する上でのガイドライン「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を通知した。

 オンライン診療とは、どのようなもので、どういうときに使うのか。また、オンライン診療で、医療はどう変わるのか。在宅診療クリニックのパイオニアのひとりで、オンライン診療の普及に力を注ぐ武藤真祐医師に、オンライン診療の今とこれからについて聞いてみた。

糖尿病など継続的な治療が必要な人の通院負担を減らせる

今年度から健康保険でオンライン診療が使えるようになったそうですが、いったいどんな人が使うのでしょうか。どちらかというと、医師のいない離島やへき地の人がやむなく使うイメージがあります。

武藤 今、進んでいるオンライン診療は、へき地だけのものではありません。むしろ都会の人が好んで使うようにならなければ、普及しないと思います。

 オンライン診療は、高血圧や糖尿病などの慢性疾患で、定期的に受診している患者さんに役立つと考えています。忙しい人が病院へ行く負担を減らす、介護が必要な高齢者を家族が病院に連れて行く負担を減らす、在宅診療で呼び出しがあったときに、医師や看護師が実際に訪問する負担を減らすといったときに利用できます。それから、受診した方がいいかわからないときに医師に判断を仰ぐという使い方もあります。ただ、最後のケースは自由診療や医療相談にあたり、健康保険は使えません。

希望すれば最初からオンラインというわけではなく、定期的に受診している人が、対面で診療を受ける回数を減らせるということですか。

武藤 その通りです。オンライン診療を健康保険で利用するには、いくつか条件があります。例えば、初診は必ず対面で行うこと、初診から6カ月以上経過していて、その間、毎月同じ医師から対面の診療を受けていること、オンライン診療開始後も3カ月に1回は対面での診療を行うことなどです。また、オンライン診療を行う医師は、対面で受診するのと同じ医師でなくてはなりません。

オンライン診療を健康保険で利用するための条件(一部抜粋)
(武藤真祐氏の資料より作成)
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いろいろな条件があるのですね。将来的には、最初からオンラインで受診できるようになるのでしょうか。

武藤 病気によってはできるものもあるかと思います。ただ、誤診のリスクを考えると、私は、初診は対面のほうがいいと思います。

画面越しでも、しっかり話せる?

オンライン診療は、具体的にはどのように使うのですか。

武藤 オンライン診療用にさまざまなシステムがありますが、ここでは私が開発に関わるYaDoc(ヤードック)について紹介しましょう。

 医師はパソコンからウェブで、患者はスマートフォンやタブレットにアプリをダウンロードして操作します。

 主な機能には、オンライン問診、モニタリング、オンライン診察があります。

 オンライン問診は、あらかじめ用意された疾患別の質問項目を画面の説明に従って患者さんに入力してもらいます。病院に行くと、初診のときに紙にいろいろ書かされますよね。あれと似たようなものですが、疾患別に必要な項目が設定されていて、入力しやすくなっています。

 モニタリングは、家庭で血圧や体重を測ってデータを入力してもらう機能です。対応機器を使っていただければ、Bluetooth(*1)で取り込むこともできます。

 オンライン診察は、一種のテレビ電話機能です。診察時間を予約すると医師から電話がかかってくるので、顔を見ながら会話ができます。

「YaDoc」によるオンライン診療のイメージ
(オンライン診療システム「YaDoc」の資料より)
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病院までの移動時間や待ち時間を節約できそうですね。

武藤 はい。私たちが福岡市で行った実証事業では、介護が必要なお年寄りを家族が病院に連れて行く負担を減らせるということで、喜んでいただいけた様子も見られました。

 もっともそれだけではなく、ICT(*2)ならではのメリットもあります。問診は必要な項目を埋めていく形ですから、医師がうっかり質問し忘れることがなくなります。モニタリングは過去の体重や血圧がグラフ化して表示されるので、経過がひと目でわかります。医師にとって、経過がわかることは大きなメリットです。

 実証事業では、「オンライン診療でも、しっかり診てもらえていると感じた」という感想もよく聞きました。医療機関では、医師は電子カルテの画面を見ながら話さなければならないこともあるかと思います。オンライン診察では、離れているからこそ画面越しに、きちんと相手の顔を見ながら話すことになるようです。

画面越しでは話しにくそうなのに、それでもしっかり話せるというのは面白いですね。ただ、高齢者などIT機器が苦手な人も多いと思いますが、どうでしょう。

武藤 確かに、IT機器が苦手な人には、オンライン診療は難しいと感じることもあるかと思います。全員がオンライン診療をやる必要はありませんから、選択肢が増えたと考えればいいでしょう。それに、今後、ますます使いやすい機器が出てくると思います。テレビ感覚で使えるようになれば、高齢者でも抵抗なく使えるのではないでしょうか。

*1 Bluetooth(ブルートゥース)は、デジタル機器用の近距離無線通信規格の1つ。身近な例では、ワイヤレスのイヤホンや、パソコン用ではワイヤレスのマウスなどの技術として使われている。

*2 ICT(Information and Communication Technology)は「情報通信技術」のこと。

メッセージ機能で医師とのコミュニケーションが密になる

血液検査や尿検査が必要なときはどうするのでしょう。

武藤 血糖値なら検査キットがあれば自分で検査できるので、受診を予約したら翌日には宅配便で検査キットが届くといったことは可能だと思います。将来的には、コンビニや薬局で検査できるようにすることも考えられます。

 オンライン診療には、当然、限界はあります。カメラを通して見るといっても、皮膚の表面などはある程度わかるでしょうが、喉の奥の方をライトで照らしてもらっても、対面と同じように見ることは難しいでしょう。

 それでも、電話に比べると情報量が多くて便利なことは多いんです。例えば在宅診療で、「吐いているけど、大丈夫でしょうか」と夜中に連絡があったときに、これまでは「どのくらいの量ですか?」と聞くと「たくさんです」とか言われて、判断しづらいことがありました。そんなときはカメラで映して見せてもらえば、ひと目でわかります。緊急性はないと判断できることが増えて、医療スタッフの負担はかなり減りました。

 患者さんの側からも、医師の顔を見るだけで安心できたという感想は、実証事業でよく聞きました。在宅の患者さんは、基本的に不安を抱えていることが多いですから。

顔を見られるのはいいですが、医師にいろいろ相談したいときにはどうでしょう。例えば対面診療なら、詳しい症状を紙に書いていって渡すことができますが…。

武藤 それは、メッセージ機能を使えばいいと思います。例えば、要介護者が通院するときに家族の都合がつかなくて、ヘルパーさんにつきそいを頼むことがあります。対面では、そういうときに家族から医師に伝えたいことがあっても、機会がありません。YaDocにはメッセージ機能があるので、オンライン診察の前にメッセージとして送っておけば、医師に届きます。もちろん本人が受診する場合も、質問事項などをあらかじめメッセージで送っておけば、診察のときに聞き忘れがなくなります。

家族は患者の前で話しにくいこともありますから、そのようなツールを使えば、医師とコミュニケーションしやすそうですね。

武藤 そうですね。患者さんの目の前で、「最近、父がぼけてきたみたいなんです」とは話しにくいですよね。そのような情報も、メッセージで送ればいいと思います。

メッセージはあとから読み返せるのもメリットだと思います。医師との会話を記録しておいて、あとで聞き直すようなことはできますか。

武藤 技術的にはもちろん可能です。オンライン診療は、医師と患者のコミュニケーションを密にするのに役立ちます。今後、チャット機能などもあると便利になるのではないかと考えています。

 次回「これからのオンライン診療はどうなるの?」は、これからのオンライン診療はどうなるのか、オンライン診療で医療はどうなるかといった点について、引き続き武藤医師に語っていただく。

第18回日本Men's Health医学会
今回の記事に登場した武藤真祐さんも登壇する学会です(一般の方も参加可)
会期:2018年7月14日(土) 8:30~18:00、7月15日(日) 8:30~17:00
会場:日本科学未来館(総合受付 7Fロビー)
※事前登録はございません。当日会場にてご登録ください 詳細はこちら
武藤真祐(むとう しんすけ)さん
医療法人社団鉄祐会 理事長
武藤真祐(むとう しんすけ)さん 1996年、東京大学医学部卒業。2002年、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。東京大学医学部附属病院、三井記念病院にて循環器内科、救急医療に従事。2004年より約2年半、宮内庁で侍医を務める。その後、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2010年、東京都文京区に祐ホームクリニックを開業。2011年9月、東日本大震災により甚大な被害を受けた宮城県石巻市に祐ホームクリニック石巻を開設。