コロナ禍での「夏のマスク生活」はここがポイント!
人との距離が十分なら外してもOK、ただし「マスクを外したら人と話さない」
大西淳子=医学ジャーナリスト
気温の上昇に伴い、マスクなしで外出する人が徐々に増えてきました。今年の夏は、熱中症を回避しつつ、新型コロナウイルスに自分が感染しない、そして人に感染させないことが求められる、大変難しい夏になります。特にマスクの扱いについては、新型コロナウイルスが身近に存在する可能性を想定しながら、その場その場で1人1人が知恵を絞って、最適な選択をすることが大切です。
本記事では、現在得られているエビデンスに基づいて、コロナ禍での「夏のマスク」との付き合い方を考えてみます。

マスクをしていると、熱中症リスクが上昇する?
気温が上がり、日差しも強くなったタイミングで、自粛生活によって暑さへの順応が遅れた人々が外出するようになり、熱中症のリスクが上昇しています。そうした状況下でマスクを着用していると、息苦しく感じ、身体に負担がかかる恐れがあります。ただし、マスクによって熱中症リスクが上昇することを示したデータは、これまでのところないようです。
日本救急医学会・日本臨床救急医学会・日本感染症学会・日本呼吸器学会で構成される、「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症診療に関するワーキンググループ」は、6月1日に「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」を公表しました(*1)。同グループは、「現時点ではマスクをつけて運動しているから必ず熱中症になりやすいとも言えない」としつつ、「心拍数、呼吸数、二酸化炭素、体感温度の上昇から、マスクをつけることで、体に負担が掛かると考えられます」との見解を示しています。
厚生労働省も、「令和2年度の熱中症予防行動」の中で、熱中症予防のため、適宜マスクを外すことを呼びかけています(*2)。具体的なポイントは以下の通りです。
熱中症予防のためのマスク使用のポイント
- 高温多湿の屋外で、人と十分な距離(2m以上)を確保できる場合にはマスクを外す
- マスクを着用している時は、強い負荷の作業や運動を避け、周囲の人との距離を十分にとった上で、適宜マスクをはずして休憩をとる
- のどが渇いていなくてもこまめに水分補給をする
*2 厚生労働省 「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイント
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