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【PR】「健康寿命」を延ばす科学的な方法

老化細胞を除去する治療、長寿遺伝子を活性化する成分に注目

最新の医学研究で、不老長寿はどこまで実現できるようになってきているのか。人生100年時代を迎えるにあたり、これは、私たち一般人にとっても高い関心のあるテーマだ。
2020年6月12日から新潟で開催予定だった第20回日本抗加齢医学会総会では、最新の老化制御法などについて議論される予定だったが、新型コロナの影響で延期に。そこで、日経BP総合研究所は日本抗加齢医学会の協力を得て急遽、6月11日にオンライン上でパネルディスカッションを開催した。テーマは「ここまでわかった老化制御のサイエンス――2020年 抗加齢医学の最新トピックス」だ。
ディスカッションの参加者は、同学会の総会会長で順天堂大学大学院医学研究科循環器内科教授の南野徹さん、同医学会理事で広報委員長の大阪大学大学院医学系研究科健康発達医学寄付講座教授の中神啓徳(ひろのり)さん、帝人グループNOMON代表取締役CEOで、プロダクティブ・エイジング コンソーシアム代表の山名慶さんの3人で、その内容をここにレポートする。聞き手は日経BP総合研究所副所長の藤井省吾が担当した。

オンラインによるパネルディスカッションは東京、新潟、大阪を結んで実施された。

臓器や脂肪に蓄積した「老化細胞」を除去する薬やワクチンが登場

まずは、抗加齢医学の最新トピックを教えてください。

南野さん 抗加齢医学で注目すべきキーワードの一つは「細胞老化」です。私たちの体の細胞は分裂を繰り返しますが、形も変わって分裂がそれ以上できなくなる状態を細胞老化と呼んでいます。細胞老化の限界を越えてしまうとがんになるので、この制御ががん化を防ぐ仕組みだと考えられています。一方で、細胞老化の状態では、老化分子や炎症分子などさまざまな生理活性物質を分泌するSASP(サスプ:細胞老化随伴分泌現象Senescence-Associated Secretory Phenotype)と呼ばれる現象が起こり、体の臓器に老化細胞がたまっていきます。

順天堂大学大学院医学研究科循環器内科教授で、第20回日本抗加齢医学会総会会長の南野徹さん。

 そこで、いま抗老化治療として注目されているのが、老化細胞を取り除いて若返りを図る「老化細胞除去薬(セノリティクス)」です。国内外でさまざまな老化細胞除去薬の効果が報告されています。我々の研究グループで開発している老化細胞除去薬を肥満マウスに投与した実験でも老化細胞が除去され、血糖値が改善しました。

 私たちはSASPなどを標的にする治療の開発も進めています。大阪大学の中神先生ともコラボレートし、老化細胞に特異的に発現しているSAGP(Senescence-associated Glycoprotein)という老化抗原を標的としたワクチンを作りました。このワクチンを肥満マウスに打つと、腹部にたまった老化細胞が減って、血糖値が下がり、動脈硬化の改善がみられました。

 また、高齢マウスに接種したところ、2カ月後には写真のように、毛並みがふさふさして若々しくなり、運動能力も改善しました。加齢によって心身が衰え、運動能力も落ちて要介護予備軍になる「フレイル」の増加が高齢社会の課題ですが、この老化細胞除去ワクチンはフレイルにも効果があるのではないかと期待しています。

右が老化細胞除去ワクチンを投与し、2カ月たったマウス。毛がふさふさして見た目にも若々しい。フレイル状態も改善した。左はワクチンを打たなかった同じ月齢のマウス。(写真提供/南野徹氏)

中神さん ワクチンといえば一般的には、感染症予防のために健康な人に打つものを想像する人が多いでしょうが、実はワクチンは治療にも生かせます。私たちはこれまで、高血圧などの生活習慣病に対するワクチンの基礎研究を進めてきました。ワクチンは、通常、数カ月から半年以上持続的に効果を発揮します。ですから、ワクチンを生活習慣病に用いる利点は、毎日薬を服用する必要がなくなり、飲み忘れやたくさんの薬の併用で起こる副作用を減らせることです。ワクチンによる高血圧などの治療が実現すれば、患者さんや介護者の負担を軽減し、医療費、社会保障費の軽減にもつながるのではないかと考えています。

日本抗加齢医学会 理事で大阪大学大学院医学系研究科健康発達医学寄附講座教授の中神啓徳さん。

 私たちのグループも、先ほど南野先生がお話しされたような老化細胞除去ワクチンの研究を進めています。

 南野先生のお話にもありました通り、老化した細胞は、自分自身が老化するのみならず、まわりにいろいろな炎症性物質をまき散らすことにより、まわりの細胞も急激に年を取っていって、ひいては、臓器全体の老化を進めてしまうということがわかってきました。

 私たちがターゲットにしたのはCD153という、あまり役に立っていないと考えられている免疫細胞の一つである老化T細胞に発現する抗原です。マウスに高脂肪食を食べさせて太らせると、内臓脂肪の中にこの老化T細胞が増加します。高脂肪食で内臓脂肪のたまったマウスにCD153を標的としたペプチドワクチンを打つと、老化T細胞が有意に減りました。また糖負荷試験をしてみると、ワクチンを打ったマウスでは耐糖能異常が改善することがわかりました。

 これとは別に、現在、新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの開発も精力的に進めています。

10週間高脂肪食を食べさせた肥満マウスに、CD153ペプチドワクチンを投与したところ、ワクチンを打たなかった対照群より内臓脂肪中の老化T細胞が有意に減り、糖尿病も有意に改善した。(データ:大阪大・中神啓徳さんらの研究。Nat Commun.2020 May 18;11(1):2482.)

老化細胞除去薬、老化細胞を除去するワクチンの実用化が待ち遠しいです。実用化されるとしたらいつ頃になりそうなのでしょうか。

南野さん 老化細胞除去薬については、すでに実用化に向けた臨床試験が進んでいるものもあります。私たちが開発中のSAGPをターゲットにしたワクチンは、1年以内にヒトに対して初めて投与する臨床試験を開始できればと考えています。

中神さん 老化は病気として認められていませんから、老化といった概念ではなく、具体的な疾患に対する治療ワクチンにするのか明確にならないと、私たちが研究しているような老化T細胞除去ワクチンの実用化は難しいのが実情です。寿命の延伸をゴールにすると結果をみるのにかなりの年数が必要ですから、フレイルのように加齢に伴う生理学的なバイオマーカーのようなものを、老化を制御する治療薬を評価する臨床試験の指標として使っていくような仕組みづくりが必要だと考えています。

●セミナーが以下から動画でご覧いただけます。

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