性行為で感染!「アメーバ赤痢」が急増中
年間1000人以上、無症状のまま感染を広げるケースも
大西淳子=医学ジャーナリスト
「赤痢(せきり)」と聞くと、発展途上国を旅行した人がかかる下痢、とイメージする人が多いかもしれません。
赤痢とは、下痢に血液や粘液が混ざって赤っぽく見える便のことで、この状態の便が出る病気が赤痢と呼ばれます。赤痢は、下痢、腹痛、血便などを主症状とする大腸の感染症ですが、実は「細菌性赤痢」と「アメーバ赤痢」の2種類があり、病原体が異なります。
細菌性赤痢の病原体は「赤痢菌」で、主に衛生環境の悪い発展途上国を訪れた人が、水や食品などを介して感染します。一方、アメーバ赤痢の病原体は、「赤痢アメーバ」という原虫で、水や食品を介した感染もありますが、先進国での主な感染経路は性行為です。感染者の肛門付近に付着したアメーバが口に入ることで感染します。近年、このアメーバ赤痢の国内での感染が増加しています(図)。
毎年1000人以上の患者、9割が男性だが女性も増加
全世界で病原性のアメーバ赤痢に感染している患者は約5000万人、死亡者数は毎年4~7万人といわれています。先進国で感染率が高いのは、男性同性愛者や知的障害者施設の入所者といわれています。男性同性愛者でアメーバ赤痢に感染している患者は、梅毒やHIV、B型肝炎、性器ヘルペスなどの他の性感染症にもかかっている可能性が高いことが知られています。
日本では、2013年以降、毎年1000人を超える患者が報告されており、2016年も、第23週(6/6~6/12)までの累計で519人に達しています。うち7~8割は国内での感染です。近年、特に心配なのは、異性間の性行為でアメーバ赤痢に感染する男女が増えている点です。
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- 実際の患者数は報告数をはるかに上回る恐れ
