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酒は百薬の長、ではなかった。それでも飲むなら

飲むべきか、飲まざるべきか、それが問題(3)

 崎谷実穂=ライター/編集者

葉石:漢方も摂りすぎると、逆に体に悪いんですね。

浅部:市販のものならいいんですよ。副作用などを厳しくチェックしてから販売されているので。でも、個人の漢方屋さんで売っているような、「ものすごい臭いがする木の枝」みたいなやつは、気をつけたほうがいいかもしれません。何が入っているかわからないですからね。

 患者さんに、「普段飲んでいて、病気の原因だと考えられそうなものを持ってきてください」とお願いしたら、そういうすごい漢方を持ってきた方がいました。成分などまでは詳しく研究できませんでしたが、飲むのをやめたらその患者さんはよくなったので、原因であった可能性は高いと思います。

葉石:それは、漢方の成分が肝臓の処理能力を超えちゃうんでしょうか。

浅部:それか、アレルギーを起こしていたのではないか、と疑っています。肝臓にはよそから入ってきた物質を処理する役割があり、いろんな物質が溜まるんですよ。それを体の免疫が間違って攻撃してしまうことがあるんです。自然にある草木から抽出した成分だからといって、副作用がないことはありません。

酒は少量でも体に悪し

浅部伸一(あさべ・しんいち)
1990年、東京大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院、虎の門病院消化器科等に勤務。国立がん研究センターなどを経て、アメリカ・サンディエゴのスクリプス研究所に留学。帰国後、2010年より自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科に勤務。現在はアッヴィ合同会社所属。専門は肝臓病学、ウイルス学。好きな飲料は、ワイン、日本酒、ビール。

葉石:天然成分だと体にいい、と思いがちですけど、そうじゃないんですね。では先生、改めて飲酒のリスクというものを教えていただきたいのですが。

浅部:ありすぎて、語りだしたら一晩かかりますね……。私は『酒好き医師が教える最高の飲み方』のあとがきを書いているのですが、本書を一通り読んで、「飲酒は害ばかりだ」という結論に達しました(笑)。

葉石:す、すみません(笑)。一応、お酒を楽しく飲むために書いた本なんですけど……取材をして事実を集めていくと、そうなってしまいました。

浅部:お酒を飲むと肝臓がんになる確率が高まるのは、かなり確かです。一方でお酒が体にいい、みたいな研究はわりと“弱い”のですよ。有名な「Jカーブ」現象で、少量の飲酒だと心血管系の疾患リスクが減少する、ということは示唆されているのですが、それは欧米では心筋梗塞が死亡原因としてものすごく多いから。これが少量の飲酒で少し抑えられると、全体で死亡率が少し下がる、というだけなんじゃないかと。

「Jカーブ」のグラフ=アルコール消費量と死亡リスクの関係(海外)
海外の14の研究をまとめて解析した結果。適量を飲酒する人は死亡リスクが低い傾向が確認できる。(Holman CD,et al. Med J Aust. 1996;164:141-145.)

 あと「お酒を飲む人」グループと、「お酒を飲まない人」というグループで比較する場合、後者に不健康だから飲めない人が含まれているのでは、ということも示唆されています。つまり、飲めるということはそれだけで健康な人なんじゃないのと。だから、「お酒を飲む人」グループの結果が良かったとしても、お酒を飲むことが健康につながっている、というわけではなさそうです。

葉石:そもそものグループにバイアスが……。

浅部:適量を飲酒しているほうが血管の病気が減る、ということは確からしいと言われています。しかし、比較的最近の論文では、がんなど他の病気のリスクが高まるから、全体では少量の飲酒であってもマイナスだそうです。残念ながら「健康のためには飲まないほうがいい」という意見が主流になってきました。飲むにしてもごく少量に抑えたほうがいいですね。

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