酒を断つには、趣味も人間関係もリセットするしかない
飲むべきか、飲まざるべきか、それが問題(2)
崎谷実穂=ライター/編集者
小田嶋:そうなんですよ、野球ってアメリカではナショナルパスタイム(国民的娯楽)と言われたりしますけど、要はスポーツと言うより暇つぶしなんですよね。酒を飲まなくなってからはサッカー観戦をするようになりました。サッカーのほうが、飲む暇ないんですよ。
あと音楽も、かつてはレゲエとか60年代ロックを聞いていたんですけど、酒無しで聞いたらなんだか白々しく聞こえてしまって。そこで嫌いだったジャズを、一から勉強しました。最初は無理やり聞いていたんですが、最終的には好きになりましたね。こうやって意識的にそれまでの習慣を変えて、生活を再構築していくんです。
葉石:そこには途方もない苦労があるんですね。
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小田嶋:酒を飲んでつぶしていた時間が激しく余るようになるのも、問題です。やることがないと、酒に走ってしまいがちなので。そこで、医者に勧められたアルコホーリクス・アノニマス、通称AAという断酒の自助グループの集会に週に2、3回いくようにしました。
葉石:小田嶋さんの著書『上を向いてアルコール』にも書かれていましたね。その集会では何をやるんですか?
小田嶋:みんなで神代植物公園に行き、花を見たりしましたね。いい大人が何やっているんだ、という感じですが(笑)。あとは、一人ずつ順番に、酒でどんなふうに身を持ち崩したかとか、今考えていることなどを話す。それがお互いの戒めになるんです。
葉石:時間をつぶすために、運動はしなかったんですか?
小田嶋:試みたんですけど、失敗しました。やっぱりお酒で体もぼろぼろになってるから、いきなり運動できないんですよね。
浅部:ほとんど食べないで飲み続けていた人は、筋力も落ちていますしね。ちゃんと食べることから始めないと。
小田嶋:お酒をやめて1、2年で8キロくらい体重が増えたんですけど、それでやっと標準体型になったという感じでした。顔も、酒を飲んでいたときは黒ずんでカサカサだった。それがなくなって、会う人会う人に、若返ったって言われましたよ。
葉石:話をお伺いしていると、アルコール依存症から抜け出すというのは、ただお酒をやめればいいというものではないんですね。
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