【徹底解説】新型コロナのPCR検査、抗原検査、抗体検査はどう違う?
迅速な抗原検査が登場、抗体検査の精度はまちまち
大西淳子=医学ジャーナリスト
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して、これまでPCR検査一辺倒だった日本でも、抗原検査や抗体検査が行われるようになりました。抗体検査については、厚生労働省が、東京、大阪、宮城の3都府県で約1万人を対象とする検査を行い、その結果も報告されています。これら3つの検査は、どこがどう違うのでしょうか。それぞれの検査で陽性となること、陰性となることは、一体何を意味するのでしょう。本記事では、これら3つの検査の特徴や目的を整理し、さらにそれらの検査が抱えている問題について考えてみます。
PCR検査、抗原検査、抗体検査の違いとは
PCR検査、抗原検査、抗体検査の違いをごく簡単に示したのが表1です。
検査の種類 | PCR検査 | 抗原検査 | 抗体検査 |
検出するもの | 鼻咽頭、唾液などに存在する、ウイルスの遺伝子 | 鼻咽頭や唾液に存在する、ウイルスのたんぱく質 | 血液中に存在する、ウイルスに対する抗体(IgG、IgMなど) |
陽性結果が意味するもの | ウイルスが体内に存在している(≒感染している) | ウイルスが体内に存在している(≒感染している) | 過去にウイルスに感染したことがある |
精度 | ウイルス量が少なくても検出可能、感度は約70% | ウイルス量が一定以上あれば検出可能、PCR検査より精度は劣る | 現時点ではまちまち |
検査実施場所 | 採取した検体を検査施設に送って実施 | 検体を採取した医療機関、あるいは検査機関(唾液の場合)で実施 | 検体を採取した医療機関で実施 |
結果判定までに要する時間 | 数時間以内だが、検体の輸送時間も必要で、結果通知まで数日かかることもある | 30分以内 | 10~15分 |
PCR検査
PCR検査は、新型コロナウイルスに感染しているかどうかの診断に用いられる検査です。その原理や精度は以下の通りです。
原理:ウイルス遺伝子の特定の配列を増幅させて検出する
PCRは、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)の略で、感染が疑われる人から採取した検体から、新型コロナウイルスの遺伝子の中の、特定の領域の配列を検出します。
具体的には、綿棒のようなものを鼻から挿入し、鼻の奥の粘膜をこすって採取した検体、あるいは唾液から採取した検体を検査施設に送って、もともとはわずかしか含まれていないウイルス由来の配列を繰り返し増やして(増幅させて)、検出できるようにします。
理想的な条件下では、増幅過程を1回行うたびに、ウイルスの特定の配列は2倍に増えます。増幅を2回行えば、2の2乗になります。検体中にウイルスがたくさん存在していれば、増幅回数が少ない段階で陽性と判断できますが、ウイルスが非常に少なければ、判定には時間がかかります。そこで、増幅過程を一定の回数繰り返してもウイルスの配列が検出できない場合を「陰性」としますが、これはウイルスが全く存在しないことを意味するわけではありません。検体中に、ごくわずかながらウイルスが含まれていた可能性は否定できません。
