熱中症のリスク、マスクで高まる? 適宜はずして水分摂取を
マスク着用での熱中症のリスク、予防策のポイント
田村知子=フリーランスエディター
新型コロナウイルスの感染予防のため、これから本格化する夏に向けても、マスクの着用が求められている。そんな中、気になるのが熱中症対策だ。すでに30度を超える真夏日となる日が増え、マスクの着用で熱中症のリスクが高まることを心配する声も聞く。そこで、帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター・センター長の三宅康史さんに、マスク着用での熱中症のリスク、予防策のポイントについて聞いた。
マスクで熱中症のリスクは高まる?
近年の夏は毎年のように厳しい暑さが続き、熱中症対策が欠かせない。今年の夏は熱中症対策に加えて、新型コロナウイルスの感染予防も必要になる。熱中症予防には、暑さが本格化する前に、少しずつ体を暑さに慣らしていく「暑熱順化」が大切だ。
しかし今年は、4月上旬から順次、政府が全国に向けて新型コロナウイルスの感染拡大による「緊急事態宣言」を発令。5月下旬に宣言が解除されるまで、外出の自粛やテレワークが続き、解除後も継続が求められる中で、「『夏の体』になる準備が十分にできていない人が多い」と、三宅さんは指摘する。
本来は、4月、5月、6月と徐々に蒸し暑くなっていく中で、通勤や通学、スポーツやレジャーなどの身体活動を行うことで、血管が拡張して血流量が増え、汗をかきやすくなるという、体の準備が整ってくる。打ち水をすると涼しくなるのと同様に、汗をかくとその汗が乾くときに体の表面の熱が奪われ、体を冷やす。また、その影響で体の表面を流れる血液も冷え、それが全身を巡ることでも、体は冷える。
「こうした準備ができないままに、通勤や通学が再開され、日差しがきつくなった屋外で活動する時間が増えれば、熱中症のリスクは高まります」(三宅さん)
さらに、マスクをすることで呼気も吸気も温められ、皮膚表面からの放熱が抑えられることでも、体は温められてしまう。ただし、マスクの着用が熱中症に直結するかといえば、「運動をする場合はともかく、普通に生活している分には、そこまでは考えにくい」と三宅さんは話す。
「『マスクをすると湿った空気を吸うことで、のどの渇きを感じにくくなり、水分をとらなくなるのでは』といわれることがありますが、のどが湿気を帯びれば感染症対策という意味では効用がありますし、マスク着用で呼気によって体から失われる水分が抑えられることで、脱水を避けられる側面があります」(三宅さん)
三宅さんは、「マスクを着用していても、涼しい環境で過ごすことを基本として、マスクを適宜はずす、冷房の効いていない場所で過ごすときには冷たい水で水分補給をするなど、ひと手間かける工夫をすれば、熱中症を防ぐことはできます」と呼びかけている。
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