日経グッデイ

トピックス

男性と女性、実際はどちらが痛みに強い?

痛みを感じたときに「我慢する」のは女性より男性

 伊藤左知子=フリーライター

長く続く慢性的な痛みを我慢している人は意外と多い。よく女性は男性に比べ、痛みに対して我慢強いといわれるが、我慢を美徳とする日本人は、どうやら男女共に痛みを我慢して、なかなか病院を受診していないようだ。

大多数が「女性の方が痛みに強い」と思っているが…

 肩こり、腰痛、頭痛など、慢性的な痛みを抱えている人は多い。ファイザーは、長く続く痛みを抱える全国の20歳以上の男女9400人(男女各4700人)を対象に、痛みに対する意識や対処法についてアンケート調査を行い、その結果をセミナーで報告した。

 昔から、女性は痛みに強いといわれるが、実際のところ、どうなのだろうか。アンケート調査によれば、女性の方が痛みに強いと考えている人は全体の7割、逆に男性の方が痛みに強いと考える人は約2割で、やはり、多くの人が「女性の方が痛みに強い」と思っていることが分かった。

 しかし、痛みを感じたときに最初にとる対処法については、「何もしない(我慢する)」が男性24.0%に対し、女性は18.2%で、むしろ男性の方が痛みを感じても我慢してしまう傾向があることが分かった。対処法として最も多かったのは男女共に「塗り薬・貼り薬を使用する」で、「病院に行く」と答えた人は男性18.5%、女性16.6%だった。男性に比べ女性で多かったのは「痛み止めを飲む」で女性15.1%、男性9.3%だった。

痛みが続いたとき、最初にとる対処法をお選びください。
出典:ファイザー「男女比較:長く続く痛みに関する実態調査2015」より
[画像のクリックで拡大表示]

男女で異なる!痛みを周囲に伝える理由

 心理面においても、長く続く痛みについて周囲に伝えている人は男性83.9%、女性90.4%で女性のほうが多く、痛みを伝える相手も、女性の場合、配偶者・恋人、子ども、母、友人など多岐に渡るのに対し、男性の場合、配偶者・恋人がダントツで、それ以外の人にはなかなか話さないという実態が分かった。

 また、自身の痛みを周囲に伝える理由として最も多かったのは、男性の場合は「自分の痛みのせいで迷惑をかける可能性があるから」に対し、女性の場合は「話すことで自分が安心するから」だった。また女性では「日常生活に支障があることを理解してほしいから」「家事や仕事などの負担を軽減してほしいから」が男性に比べて多かった。

あなたが「長く続く痛み」を抱えていることを周りの人に伝えるのはなぜですか?
出典:ファイザー「男女比較:長く続く痛みに関する実態調査2015」より
[画像のクリックで拡大表示]

 作家・心理カウンセラーの五百田達成さんは「女性は感情に重点があり、分かると言ってもらうことで安心したいため、人に話す傾向があり、男性は合理性で、プライドが高く、他人に弱みを見せたがらない傾向があるので、周囲にあまり話さないと考えられます」と分析する。

「長く続く痛みに対する対処」に関する男女の共通点

 長く続く痛みに対する意識や行動は男女で若干異なる傾向がみられたが、男女共に共通して分かったのは、長く続く痛みを抱えていても、多くの人が病院に通院していないという現状である。

 アンケート調査から、長く続く痛みを抱える人のなかで、痛みの強さが3以上ある人でも、現在病院に通院している人は3割にも満たないことが分かった。実は、痛みの強さを11段階で評価して(0:まったく痛みはない、2:ほんの少し痛い、4:少し痛い、6:痛い、8:かなり痛い、10:想像を絶する最悪の痛み)、3以上ある痛みは治療対象とする国際的な指針が出ているのだが、現実には、多くの人が治療すべき痛みを我慢しているのである。

あなたは今まで(5年以内)に「長く続く痛み」で病院・医院に通院したことはありますか?
出典:ファイザー「男女比較:長く続く痛みに関する実態調査2015」より
[画像のクリックで拡大表示]

 順天堂大学医学部麻酔科学・ペインクリニック講座教授の井関雅子さんは、「アンケート調査から、女性の方が痛みに強いという通説が、男女共に支持されていることが分かりましたが、実際には、女性は早期の段階であれこれと自己対処して、男性のほうがむしろ痛みを我慢していることが分かりました。ただ、全体的に病院に行く人は少なく、さらに女性の場合、様々な人に相談したり、口コミを重視するあまり、情報に振り回され、正しい対処(専門家の診断)に辿りつくまで遠回りしている可能性もあります」と警鐘を鳴らす。

2人に1人が「痛みはあっても我慢すべき」と考えている

 また、アンケート調査では「痛みがあってもある程度我慢すべきだ」と思っている人が、男性53.2%、女性58.6%と半数以上の人が、ある程度の痛みは我慢すべきと考えていることも分かった。井関さんは「日本には我慢は美徳という精神がありますが、痛みを我慢することは美徳ではありません」と強調する。

 井関さんによると、痛みには主に、けがや炎症で発痛物質が生じる『侵害受容性疼痛』と、神経が正常に働いていないことにより発生する『神経障害性疼痛』の種類があり、当然のことながら、痛みの種類によって使われる薬は異なる。この薬の選択を間違えると、症状が治らないどころか、場合によっては悪化することもある。それだけに、病院の受診は不可欠だ。

 では、どのタイミングで病院を受診するのがいいのだろうか。井関さんは次の項目がひとつでも当てはまれば、受診するタイミングだという。

病院を受診するタイミング
  • 痛みの強さが11段階のうち3以上のとき
  • 症状が改善しないとき
  • 安静にしていても痛いとき
  • 「ピリピリ」「ジンジン」など通常の痛み方と違うと感じるとき
  • 痛みで夜眠れないとき

 「痛みが続く人は、「ペインクリニック」などの痛みの専門診療科で、早期に適切な診断と治療を受けることが大事。と言う井関さん。痛みの原因の中には完治が難しい場合もあります。完全主義に完治を目指すのではなく、改善を目指しましょう。痛みの原因がはっきりしない場合も、原因を突き止めるより、痛みの緩和を行い、生活の質の向上に努めることが大切です」と話した。

 あなたは、これくらいの痛みは我慢できると思って、長く続く痛みを我慢していないだろうか。痛みが続くなら、我慢せずに医療機関に相談を。