“いい腸活”に欠かせない「水溶性食物繊維」の知られざる事実
腸内環境とメタボは密接な関係がある~大妻女子大学 青江誠一郎教授に聞く(前編)
二村高史=フリーライター
ここ数年、健康関連の話題で注目されているのが「腸」。書店の健康本のコーナーでは腸の大切さを書いた本が並び、健康雑誌やテレビの健康番組では“腸活”が流行のキーワードになっている。「腸は第二の脳」「いや脳よりも偉い」とさえ言われているが、なぜそれほどまでに腸は大切な存在なのか、そして腸を健康に保つにはどうすればよいのか、大麦研究の第一人者で“食物繊維のスペシャリスト”でもある大妻女子大学家政学部教授 青江誠一郎さんに話を聞いた。
青江教授によると、現代人は「水溶性食物繊維」が不足しており、それがメタボなどにも影響していると話す。それを防ぐには、お米に大麦を混ぜたご飯を1日1回摂るだけでメタボ解消などの効果が期待できるという。
なぜ腸が大切か、話題の「腸内フローラ」とは?

最近の“腸活”ブームはとどまることを知らない。しかし、はたして本当に腸はそれほど大切なものなのか。「もしかしたら“作られたブーム”では?」と疑問に感じている人もいるかもしれない。そんな疑問を、さっそく青江教授にぶつけてみた。
「腸内環境の重要性は、近年の研究によって明らかになってきました。かつては、腸内細菌は培養して顕微鏡を使わなくては見ることができず、どのくらいの数がいるのかもわかりませんでした。しかし、遺伝子工学が発展し、腸内細菌の遺伝子を分析してみると、なんと1人の人間の小腸と大腸に約500~1000種類、500兆~1000兆個もの腸内細菌が生息していることがわかったのです。しかも、どんな細菌がどのように生息しているかによって、生活習慣病をはじめとする病気とも深い関係があるとわかってきました」と青江教授は説明する。
腸が話題になってきたのには、明らかな理由があるようだ。そもそも、1人の人間の全細胞の数が40兆個とも60兆個とも言われているのだから、500兆~1000兆個というのは驚異的な数字である。そして、その1000兆個の重さをすべて合わせると、約1.5キログラムにもなるという。
そして、“腸活”の話題で必ず出てくるのが「腸内フローラ」という単語。これはどういう意味なのだろうか。
「フローラとはお花畑のことです。腸の内側にさまざまな腸内細菌がすきまなくビッシリと生息している様子を、お花畑に例えたものです。腸内細菌のなかには、有益な働きをする菌(善玉菌)もあれば、体に有害な働きをする菌(悪玉菌)もあります。善玉菌の代表的なものには、乳酸菌やビフィズス菌があり、同じ乳酸菌にもさまざまな種類があることが知られています。悪玉菌の代表は大腸菌やウェルシュ菌で、有害物質を作り出します。さらに、環境によって働きが変化する菌(日和見菌)もあります」
「重要なのは、腸内でどのようなバランスで菌が存在しているかです。悪玉菌が優勢になれば善玉菌が減ってしまい、腸内環境は悪くなってしまいます。ただし、最近の研究では、現在の分類法で善玉菌の分類に属していてもそれほど効果がないものや、逆に悪玉菌の中でも多面性があり、一概に有害とは言えない菌がいることもわかってきました。『大切なのは、さまざまな菌が生息できる多様性です』」と青江教授は話す。
