骨の健康を保つのに必要なビタミンDの目安量を増やす
瀧本さんが女性やその家族にとって重要な改定のポイントを挙げたのが下表だ。例えば、ナトリウム(食塩相当量)については、調査の結果、世界的にも多い日本人の摂取量が減っている傾向が見られた。しかしWHO(世界保健機関)が示した循環器疾患の予防に必要な1日の目標量5g未満とは差があり、「より頑張って」というメッセージを込めて引き下げられた。
また、調査から若い世代は高齢者と比較して野菜や果物、魚介類の摂取量が少なく、動物性脂肪の摂取量が多いことがわかり、それが将来の生活習慣病のリスクにつながると考えられた。その改善を促すために飽和脂肪酸、コレステロール、カリウムの改定を行った。
このほか骨の健康を保つのに必要なビタミンDの目安量を増やすとともに、その脚注では過度な紫外線対策をしがちな女性を念頭に、適度に日光を浴びることの必要性も訴えている。
●たんぱく質
(たんぱく質維持必要量 *1)
男女共全年齢区分
0.65→0.66(g/体重・kg/日)
筋肉量の低下は高齢者のフレイルの原因になるだけではない。とくに若い女性のダイエットによるたんぱく質不足は生活習慣病のリスクを高める。毎日の食事でたんぱく質の摂取を心がけたい。
●ビタミンD
(目安量 *2)
18歳以上
5.5→8.5(μg/日)
骨密度を高め閉経後の骨粗しょう症の発症予防につながるビタミンD。日照により皮膚でビタミンDが産生されることを踏まえ「脚注」では「ビタミンD摂取においては日照時間を考慮に入れることが重要」と補足された。
●飽和脂肪酸
(目標量)
3~14歳
10(%エネルギー)以下(新たに設定)
動物性の脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸のとり過ぎは心臓血管疾患のリスクを高める。子どものうちから魚などに含まれるn-3系、n-6系脂肪酸をバランスよくとる習慣を促すために定められた。
●コレステロール
(目標量)
男女共全年齢区分
200mg/日未満(新たに脚注に記載)
日本人に脂質異常症が増加している。重症化すると心臓血管障害のリスクを高めるため、とり過ぎに注意する必要がある。今回は、飽和脂肪酸の項目の脚注として記載された。
●カリウム
(目標量)
3~5歳 1400mg/日以上(新たに設定)
野菜や果物に豊富に含まれ高血圧の予防効果もあるカリウム。日本人では高齢者ほど野菜をたくさん食べ、逆に若年層の野菜不足が指摘されている。家庭の食生活改善を促すため設定された。
●ナトリウム
(目標量 *3)
女性 7.0→6.5(食塩相当量・g/日未満)
改定のエビデンス(科学的根拠)となった調査では、日本人のナトリウム摂取量は低下傾向にあるが、それでもWHOが提唱する目標量5g未満/日とは差があるので、さらなる減塩に取り組みたい。
*1「たんぱく質維持必要量」:健康を維持するために必要なたんぱく質の栄養素としての量。肉や魚など食品の量ではない。
*2「目安量」:(ある性・年齢階級に属する)人々が、良好な栄養状態を保つために十分な量。不足による問題が見られない集団において習慣的に摂取されている量の中間値として算出された。
*3「目標量」:生活習慣病の一次予防のために現在の日本人が当面目標とすべき摂取量、またはその範囲。
食事摂取基準は食品ではなく栄養素の量で示しているので、一般の人が日常の献立作りに役立てるのは難しい面もある。瀧本さんは「知りたいことがあれば地域の保健センターの管理栄養士などに相談してほしい」と話している。
(取材・文:荒川直樹)
この記事は「日経ヘルス 2020年4月号」からの転載です。
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国立健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部長

