「新型コロナウイルスは夏に弱い」というのは本当か
実験室では「高温多湿」と「紫外線」が感染力を弱めるが、現実世界では?
大西淳子=医学ジャーナリスト
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の日本国内での感染者数は最初のピークを越え、収束へと向かいつつあります。しかし、今後、社会経済活動を再開しながらも感染対策は継続し、第二、第三の波に備えることが必要と言われています。
一方で、新型コロナウイルスは、既存のコロナウイルスと同様に高温多湿や紫外線に弱く、夏になれば感染は減るのではないか、という楽観的な声が海外から聞こえてきます。果たして本当に、新型コロナウイルスを心配しなくてもよい夏がやってくるのでしょうか。いくつかの最新知見とともに考えてみたいと思います。

米政府は「気温21~24℃に紫外線が加わると2分で半減」と発表
一般的な風邪の症状を引き起こす既存のコロナウイルスには、季節変動があり、冬に流行のピークを迎え、夏には検出数がぐっと減ることが知られています(*1)。この季節変動が、新型コロナウイルスにも当てはまるのではないかと期待する見方は以前からありました。
夏の到来に世界で最も期待しているのは、米国かもしれません。2020年4月23日、米国土安全保障省科学技術局長代行のWilliam N. Bryan氏は、ホワイトハウスで行われた記者会見において、「政府の研究者が行った実験で、新型コロナウイルスが気温、湿度の上昇とともに、そして日光によって、感染力が弱まることが確認された」と発表しました(*2)。
研究者たちは、感染力を持つ新型コロナウイルスをステンレス板の上に付着させ、気温や湿度を変化させてウイルスが半減するまでに要する時間を比較しました。その結果、暗い中、気温21~24℃、湿度が20%という条件では、ウイルスの半減には18時間を要しました。しかしその時間は、気温21~24℃、湿度80%にすると6時間に、気温35℃、湿度80%にすると1時間にまで短縮しました。さらに、気温が21~24℃で湿度80%の環境に、夏の日差しに相当する紫外線を照射すると、ウイルスが半減するまでの時間は2分になりました(表1)。
湿度20% | 湿度80% | |
気温21~24℃ | 18時間 | 6時間 |
気温35℃ | - | 1時間 |
気温21~24℃+紫外線 | - | 2分 |
この研究チームはエアロゾル状態のウイルスを対象とする実験も行い、同様の結果が得られたことから、「高温多湿と紫外線、すなわち夏の気象が、新型コロナウイルスの感染力を大きく減じると考えるに至った」とBryan氏は述べました。
