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「新型コロナウイルスは夏に弱い」というのは本当か

実験室では「高温多湿」と「紫外線」が感染力を弱めるが、現実世界では?

 大西淳子=医学ジャーナリスト

実験室では高温多湿に弱い、では現実世界では?

 しかし、こうした予測に慎重な意見を示す専門家たちもいます。米国科学技術政策局(OSTP)から、新型コロナウイルスの感染に気温、湿度および季節が及ぼす影響について尋ねられた全米アカデミーズ(National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine)は、緊急の専門家会議を行い、以下のような回答を4月7日にOSTP局長のKelvin Droegemeier氏に送付しています(*3)。

 気温と湿度が新型コロナウイルスの感染拡大に及ぼす影響について疫学的に検討し、高温多湿が感染者の増加を抑制することを示唆した研究や、実験室内でウイルスの感染力に温度や湿度が及ぼす影響を調べて、このウイルスが高温多湿に弱いことを示した研究の結果は、既にいくつも報告されている。

 だが、解釈には注意が必要だ。特定の環境下でウイルスが感染力を維持しているかどうか以外に、新型コロナウイルスの感染にかかわるさまざまな要因が、日常生活の中に存在しているからだ。

「気象条件の違いは感染拡大に影響しない」という疫学研究も

 新型コロナウイルスが高温多湿や紫外線に弱いことを示す実験データが得られている一方で、実際の感染者数とその都市の気象条件を分析し、「気象は新型コロナウイルスの感染拡大に影響を及ぼさない」とした疫学研究もあります。その代表と思われるのが、中国の224都市のデータを用いて、気温や紫外線量と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行の関係について検討した研究です(*4)。

 この論文の著者らは、中国の224都市(武漢市が存在する湖北省内17都市を含む)の新型コロナウイルスの累積感染者数と、それらの都市の、2020年1月から3月までの1日の平均気温、最高気温、最低気温、相対湿度、紫外線量を含む気象データの関係を分析しました。紫外線の強さは、その場所の緯度と高度が高くなるにつれて、低下する傾向が見られました。

 相対湿度と紫外線の強さを考慮して分析したところ、どの都市でも、気温は、累積罹患率、基本再生産数(R0;1人の感染者が平均で何人に感染を広げる可能性があるかを示す数字)のどちらとも有意な関係を示しませんでした。また、気温と相対湿度を考慮して分析すると、紫外線量は、累積罹患率、R0に影響していませんでした。相対湿度、最高気温、最低気温についても同様に検討しましたが、どの指標も累積罹患率とR0に有意な影響は見られませんでした。著者らは、「新型コロナウイルス感染を抑制するための対策において、季節が夏に向かうことに期待してはいけないだろう」と述べています。

握手やハグの習慣、人が集まる機会…他の危険因子は大きく異なる

 人々が高温多湿の夏に期待するようになった理由の一つは、北半球の冬から春にかけて、新型コロナウイルスの著しい感染拡大が見られたのに対して、同時期の南半球の国の感染者が比較的少なかったことにあります。

 しかし、国ごとに新型コロナウイルス感染者数を比較しようと思うと、生活習慣(あいさつの際に握手やハグをするかどうか、宗教行事や家族のイベントなどで人が集まる機会が多いかどうか、パンデミック前からマスクや頻回の手洗いをする習慣があったかどうか、など)や、交通事情(公共交通機関の利用頻度や混雑の程度など)、医療事情(気軽に受診できる医療体制かどうか、COVID-19の危険因子として知られる慢性疾患の管理が良好かどうか、検査体制の充実度)などが大きく異なるため、暖かい国と寒い国の感染状況を比較することは簡単ではありません。その点、国土は広大であっても、同じ中国国内の都市の間で比較を行った上記の研究の結果は、気象と感染の関係を示すデータとしてある程度信頼できると考えられます。

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