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週末の寝坊で病気リスクが増える? 「社会的時差ボケ」の防ぎ方

社会に強制される時間と体内時計のズレが原因

 伊藤和弘=ライター

 生体リズムを作り出す体内時計の基本となるのは時計遺伝子群だ。私たちの体の細胞の一つひとつに時計遺伝子が組み込まれており、普段の生活では親時計の支配下で、多数の子時計が日々の時刻調整をしながら体温、ホルモン分泌などいろいろな生体リズムを維持している。「内的脱同調」とは、親時計と多数の子時計の相互の時間関係(タイミング)がばらばらになることを意味する。体内で時刻のズレが生じることから時差ボケの原因となるのだ。

若い世代ほど時差ボケが大きくなりがち

 具体的に時差ボケを計算するには、就寝から起床の中間の時刻である「睡眠中央値」を見る。例えば平日は0時に寝て6時に起きていれば、睡眠中央値は3時。休日は2時に寝て10時に起きていれば、睡眠中央値は6時。平日と休日では睡眠中央値が3時間ずれている。このとき、社会的ジェットラグが3時間ということになる。

平日の睡眠中央値と休日の睡眠中央値の差を「社会的ジェットラグ」と呼ぶ。厳密には睡眠負債を調整して計算する。
[画像のクリックで拡大表示]

 「これまでの調査から、先進国では社会的ジェットラグが1時間以上の人が約70%、2時間以上の人が約30%いるといわれています」(三島さん)

 2時間ということは、週末ごとに時差が2時間ある東南アジアに出かけているようなものだ。

 社会的ジェットラグは幅広い世代で起こるが、特に若い世代ほど大きくなることが分かっている(*1)。「一般に20歳前後が最も夜型の体質になることに加え、若者はより多くの睡眠時間を必要とするため」と三島さん。年を取ると必要睡眠時間が短くなるほか、自然に朝型になるので早起きが苦にならないし、特にリタイヤ世代では出勤などの社会時刻の縛りから解放されて必要な睡眠時間も減るので時差ボケが小さくなるという。

肥満やメタボのリスクを高める

 さて、社会的時差ボケは何が問題なのだろう? 週末ごとに海外に出かけているような状態は確かに肉体的に負担かもしれないが、つらいのは月曜日の朝くらい。睡眠不足をためていくより、週末ごとに解消しているほうが健康的な気もする。

 「確かに2~3カ月ならいいでしょう。でも、その生活が10年20年と続くことで疾病のリスクが高くなっていく。社会的ジェットラグの一番の問題は、長く続けられてしまうことなんです」(三島さん)

 時差ボケによって、インスリン抵抗性(インスリンに対する感受性が低下し、インスリンの作用が十分に発揮できない状態)が生じたり、LDLコレステロールの数値が上がったりしやすくなるといわれる。実際、約1000人を対象にした調査から、時差ボケが大きい人ほど肥満者の割合やメタボリックシンドロームの罹患率が高いことも確認されている(*2)。メンタルヘルスにも影響しており、ある研究では時差ボケが大きいほど抑うつ傾向が強かった(*3)。

たっぷり眠っているという人でさえ…

 人間は置かれた環境に慣れていく。寒い地方で暮らしていると徐々に寒さに慣れていくように、睡眠不足も長く続くと感じにくくなっていくという。

 三島さんは興味深い実験を行った。「毎日たっぷり寝ている」と思っている若者(平均23.4歳)16人に、9日間にわたって暗室で毎日12時間横になってもらい、理想の睡眠時間を調べたのだ。

*1 Curr Biol. 2012 May 22;22(10):939-43.
*2 Int Obes(Lond). 2015 May;39(5):842-8.
*3 Chronobiol Int. 2011 Nov;28(9):771-8.
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