「外反母趾」の大半は遺伝!直接の原因は靴じゃなかった
第1回 4人に1人が悩む「外反母趾」、適切な治療で足の痛みを治そう
山本裕美子=フリーライター
多くの女性が悩み、近年は男性でも増えているといわれる「外反母趾」。「長い間適切な治療方法はないとされてきたが、最近は「靴のインソールを作る」ことで悪化を予防したり、「手術をする」ことで外反母趾を治せるようになってきた。簡単なストレッチを行うだけで足の痛みが軽減する人もいるそうだ。そこで足専門のクリニックを取材し、外反母趾の原因や治療方法について話を聞いた。
諦めていた「外反母趾」が適切な治療で治せた!
筆者は子どもの頃から外反母趾だった。それに加え、仕事で長時間パンプスを履かなければならないことも重なったため、外反母趾が年々悪化。ついには親指が曲がって人差し指が圧迫され、人差し指を脱臼するまでに。2015年7月に親指の骨を削り、親指と人差し指にピンを入れる手術をした。
それまで、「パンプスを履くと親指の付け根が痛い」という自覚症状はあったが、そこまでひどい状態とは思わず、幅広のフラットシューズを履くことでごまかしてきた。しかし、ある日突然人差し指が痛くなり、近所の整形外科医に駆け込んだものの原因は分からずじまい。あまりに痛いのでネットで足の痛みや変形に特化したクリニック「足のクリニック 表参道」の存在を知り、診てもらったところ、そこで初めて人差し指の脱臼が判明した。
外反母趾はこのように症状がひどくなる前に早めに治療を行うことが大切だ。外反母趾を治すにはどんな治療が必要なのか、筆者の体験レポートを織り交ぜながら外反母趾の治療について紹介したい。
「外反母趾」の大半は遺伝って、どういうこと?

外反母趾とは、足の親指(母趾)の先が足の人差し指に向かって「くの字」に曲がった状態を指す。そのため、親指の付け根の関節が突き出てしまい、その部分に炎症や痛みが起こるようになる。
「『外反母趾はハイヒールなど靴の形状によるストレスが原因』という考え方が一般的にはされているようですが、実は、靴を履かないで生活している人種の中にも外反母趾の人がいることが分かっています。つまり、外反母趾は足の骨格構造の遺伝から起こる症状であり、靴の形状は2次的な問題といえます」(足のクリニック 表参道・桑原靖院長)。
つまり、もともと外反母趾になりやすい人が細身の靴やハイヒールを長時間履き続けることで、症状が悪化する可能性が高まるのだという。ヒールが高ければ高いほど足の指の付け根への負担は増大する。そのため、「靴の使用環境の問題が、外反母趾の悪化を予防するための大切なテーマであることは間違いありません」(桑原院長)。
ハイヒールは外反母趾の直接の原因ではないが、自分の足に合わない靴を履き続けると、外反母趾の症状は進行しやすくなるのだ。
外反母趾を引き起こす「足のアライメント異常」とは?
桑原院長によると、外反母趾になる原因はほぼひとつで、それは「足のアライメント異常」だ。
「アライメント」とは英語で「一直線にすること」などの意味があり、ここで言う「アライメント異常」とは、ひと言で言うと「足のアーチ状構造(土踏まず)の骨格の配列が崩れた状態であること」。爪先からくるぶしにかけては多くの骨があり、それらが組み合わさってアーチ構造を作っているので、その構造、角度などが狂うと、多くのトラブルが起こるのだ。
「古代ローマ時代の水道橋や長崎市の眼鏡橋のようなアーチ橋は、釘などは使わずアーチ型の石積み構造と重力によって形状を保っています。人間の足のアーチ構造も同様で、多数の骨が複雑にかみ合うことで、体重の数倍の重みが加わっても身体を支え続けることができるのです」
つまり、足の「アライメント異常」とは、足のアーチ構造が遺伝的にもともと弱くて崩れている状態、または、合わない靴やパンプスなどを長年履くことでその状態が助長され、アーチ構造がさらに崩れた状態を指す。