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広がる新型コロナ変異株 その怖さの正体とは

既にワクチンを接種した人も感染予防策は必須

 大西淳子=医学ジャーナリスト

国内で懸念される変異株は現時点で5種類

 ここで、現在までに見つかっている変異株のうち、主なものの特徴を整理しておきましょう。

 WHOの暫定定義では、感染性や重症度が増す、または、ワクチン効果を弱めるなどといった方向に性質が変化した可能性がある株を、「懸念される変異株(Variants of Concern; VOC)」として分類しています(*2)。現時点で日本においてVOCと定義されている変異株の概要を表1にまとめました。

*2 VOCとは別に、「注目すべき変異株(Variants of Interest; VOI)」という分類もある。VOIは、主に感染性や重症度、ワクチンの効果などに影響を与える可能性が示唆される株を意味する。
表1 日本国内における懸念される変異株(VOC) 2021年5月16日現在
表1 日本国内における懸念される変異株(VOC) 2021年5月16日現在
注1:変異株はそれぞれ、ほかにも多くの変異を保有する。たとえば、英国由来のB.1.1.7系統では23カ所に変異が見つかっており、うち17カ所が、アミノ酸配列に変化が生じる変異だった。それらの中でも、特にウイルスの特性に対する影響が大きいと見られる変異をここに記している。なお、「二重変異」や「三重変異」という呼称について、国立感染症研究所は「スパイク領域の変異数を正確に表したものではない」としている。
注2:新型コロナウイルス表面のスパイクたんぱく質は、通常、1273個のアミノ酸によって形成されている。N501Yは、501番目のアミノ酸がN(アスパラギン)からY(チロシン)に置換される変異が遺伝子配列上に生じたことを意味する。
[画像のクリックで拡大表示]

インド由来の変異株は日本人にとって危険?

 このところ、「日本でインド由来やカリフォルニア由来の変異株が流行したら、6割の日本人において細胞性免疫が十分に働かない可能性がある」ことを示した研究結果が、メディアで取り上げられています。これはどういうことなのでしょうか。

 この論文は、東京大学医科学研究所の佐藤佳氏の研究室が主催する新型コロナ研究コンソーシアム「The G2P-Japan」に参加している、熊本大学/鹿児島大学ヒトレトロウイルス学共同研究センターの本園千尋氏らが、プレプリントサーバーBioRxivで2021年4⽉5⽇に公開したものです(*3)。この研究で同氏らは、日本人の6割において、インド由来の変異株や、米国でVOCに分類されているカリフォルニア由来の変異株(B.1.427/429系統)に対する「細胞性免疫反応」が十分に起こらない可能性を示しました。

 細胞性免疫反応は、外から入ってきたさまざまな異物(細菌やウイルス、他人からの移植臓器など)を攻撃する免疫反応のことです。著者らは、この細胞性免疫反応において、「HLA-A24」という遺伝子が、新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質に対する免疫反応を強力に誘導する役割を担っていることを発見しました。しかし、既知の新型コロナウイルス株のうち、Y453F、または、L452Rという変異を持つスパイクたんぱく質の場合には、HLA-A24を介した細胞性免疫の誘導はほとんど起こらないことが分かったのです。

 さらに、これらY453F 変異とL452R変異は、人の細胞へのウイルスの結合を強くすること、L452Rはウイルスの感染性と増殖能力も高めることを示しました。

 日本人の約6割が、HLA-A24遺伝子を持っています。今回報告されたデータは、全て実験室で得られたものではありますが、L452R変異を持つインド由来の変異株とカリフォルニア由来の変異株は、日本人にとってより危険である可能性を示唆するものといえます。

 なお、カリフォルニア由来の変異株は、米国ではVOCに分類されていますが、WHOと日本はVOIに分類しています。国内では、検疫で、米国やメキシコからの入国者から見つかっており、2021年3月下旬には沖縄県の患者からも検出されています。

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