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まだ間に合う、海外旅行前にワクチン接種で感染予防

アジアに行くならA型肝炎ワクチンを

 高橋義彦=医学ライター

旅先には日本にはない感染症も待ち受けている。(©PaylessImages-123rf)

 今年のゴールデンウィーク(以下GW、4月29日~5月8日)は、3連休が2回含まれる。間に2日ある平日を休むことができれば、実に10連休。このときとばかり、海外旅行に出かける人も多いはず。旅行会社のJTBが予測する今年のGW中の海外旅行者は54万6000人で、去年より約3%増える見込みだ。

 しかし、旅行計画を練ると同時に、特に衛生状態の良くない開発途上国を旅行する人に気を配ってほしいのが、出発前の感染症予防対策だ。GWの旅行に間に合うワクチン接種についてまとめた。

中央アフリカや中南米に渡航するなら黄熱ワクチンを

 海外では、日本で流行していない感染症が日常的に発生していることがある。仕事や留学などで海外に長期滞在する人はもちろん、短期の海外旅行に出る人も、まずは渡航先の感染症発生状況について、事前に情報を得ておくべきだ。「外務省海外安全ホームページ」(*1)や厚生労働省検疫所(FORTH)のホームページ(*2)で、国・地域別の最新情報を入手できる。

 渡航先で感染症が発生している場合は、出発までにその感染症を予防するためのワクチンを受けておくことが望ましい。海外渡航者が受けるワクチンには、渡航時に要求されるワクチンと自主的に受けるワクチンがある。

 例えば、中央アフリカや中南米の国々では、蚊が媒介する黄熱というウイルス感染症が発生している。短期の旅行であっても、黄熱ワクチンを受けていないと入国できない。遅くとも出発10日前までに受ける必要がある。黄熱ワクチンを受けられる施設は限られているが、FORTHホームページの「予防接種実施施設の探し方」(*3)で調べられる。

アジアに渡航するならA型肝炎ワクチン、60歳以下はほとんど免疫なし

 一方、ヨーロッパ、北米、オセアニア(オーストラリア、ニュージーランド)以外の国に短期的に旅行する場合は、自主的な防衛策として、A型肝炎ワクチンの接種が推奨されている。A型肝炎のリスクが中等度~高度の国は非常に多い(*4)。

 A型肝炎は、特にインドなどアジアへの旅行でかかる人が多い。ウイルスに感染してから2~7週間の潜伏期間を経て、急に発熱、倦怠感や食欲不振、吐き気、嘔吐などの消化器症状が現れる。特効薬はなく、対症療法が中心となる。重症の場合は1カ月以上の入院を要することもある。感染後数週間は周囲の人にうつす危険性があるので、二次感染の予防も重要だ。

 最近は、都市観光に飽き足らず、衛生環境の良くない地域に踏み入るアウトドア系の旅行者が増えている。A型肝炎は、そうした地域で、水や魚介類などの食べ物を介して感染することが多い。特に60歳以下の日本人は、ほとんどがA型肝炎ウイルスに対する抗体を持っていないから、ワクチンを接種したほうがよいだろう。

 A 型肝炎ワクチンは、ウイルスのタンパク質を不活化したワクチン。接種すればほぼ100%で抗体が作られ、予防効果は数年以上続く。接種の回数は、国産ワクチンの場合、6カ月間に3回(少なくとも1カ月間に2回)必要になる。このほか、やや高価だが、1回で済む輸入ワクチンもある。これなら今年のGWに海外旅行する人も間に合う。

 A型ワクチンの接種を受けられる施設は、前出のFORTHホームページ「予防接種実施施設の探し方」で調べられる。黄熱ワクチンと違って、施設数はかなり多い。なお、A型肝炎ワクチンは、生ワクチンである黄熱ワクチンとの同時接種はできない。

 そのほか、この先、夏休みや年末年始の海外旅行に備えて、接種を検討しておきたいワクチンを以下にまとめた。表に掲げたワクチンは、主に海外赴任などで長期(1カ月以上)滞在する人に対して推奨されているが、海外旅行でも渡航先や目的によっては受けておいた方が安心だ。

 感染症の心配なく旅行を楽しむために、ワクチン接種についてぜひ検討いただきたいと思う。

海外渡航前に受けておきたい予防接種と対象者
予防接種対象接種方法など
黄熱感染リスクのある地域(中央アフリカ、中南米)に渡航する人1回の接種で接種後10日目から10年間有効。黄熱予防接種証明書を入国時に要求する国や、乗り継ぎの時に要求する国もあるので、検疫所で要確認
破傷風冒険旅行などでけがをする可能性の高い人定期予防接種で2種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風)を12歳の時に受けていれば、20代前半くらいまでは免疫があるので接種は不要。その後は、1回の追加接種で10年間有効な免疫がつく
A型肝炎途上国に中・長期(1カ月以上)滞在する人。特に40歳以下2~4週間隔で2回接種。6カ月以上滞在するのであれば6カ月目にもう1回接種すると約5年間効果が続くとされている。1回で済む輸入ワクチンもある
B型肝炎血液に接触する可能性のある人4週間間隔で2回接種し、さらに、20~24週間後に1回接種
狂犬病イヌやキツネ、コウモリなどの多い地域へ行く人で、特に、近くに医療機関がない地域へ行く人。動物研究者など、動物と直接接触する人4週間隔で2回接種し、さらに6カ月から12カ月後に3回目を接種
ポリオ流行地域(アフガニスタン、ナイジェリア、パキスタンほか)に渡航する人小児の基礎接種が完了している人は、成人後に追加接種として不活化ワクチンを1回接種。特に、1975年(昭和50年)から1977年(昭和52年)生まれの人は、ポリオに対する免疫が低いことがわかっているので接種が勧められる
日本脳炎流行地域に長期滞在する人(主に東南アジアでブタを飼っている農村部)1~4週間間隔で2回接種し、1年後追加接種を1回(基礎免疫が完了)。基礎免疫の完了後は、1回の接種で4~5年間有効な免疫がつく
厚生労働省検疫所ホームページ「FORTH 海外で健康に過ごすために」などを基に作成