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がん放置を勧める「近藤理論」を放置してはいけない

日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授・部長/外来化学療法室長 勝俣範之氏

 小崎丈太郎=日経メディカルCancerReview

出典:2016年4月12日、日経メディカルCancerReview(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

免疫細胞療法をどう見るか

免疫細胞クリニックの免疫細胞治療(*4)をどのように見ていますか。

勝俣 近藤先生と同様なところは、科学的エビデンスのないことを推奨している点です。抗がん薬に免疫療法をプラスすると副作用が減り、効果も高まるとうたっているクリニックがありますが、そのようなデータはありません。併用を推奨する利点は、効果が現れた場合、どちらの効果か分からないところです。

 免疫チェックポイント阻害薬(*5)を使っているクリニックもありますが、ホームページで見るとニボルマブを20mg、活性リンパ球療法と併用しますなどとうたっている。周知の通り、ニボルマブは「根治切除不能な悪性黒色腫」では1回2mg/kg(体重)を3週間間隔で投与します。「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」の適応では1回3mg/kg(体重)を2週間間隔で投与します。一律、20mgの投与では十分な効果が期待できません。

 近藤先生の場合はお金の負担はそうでもないけれども、免疫療法クリニックの場合は貯金をはたいて何百万円も使うわけですから、罪はこちらの方が重いと言えます。

 こうした医療が幅を利かせる点について標準治療を推奨する側にも反省すべき点があります。

*4 患者のリンパ球を取り出して体外で活性化させ、それを投与することによりがん細胞を攻撃する方法。保険は適用されない。
*5 がんによってブレーキがかかった免疫の攻撃力を回復させる治療薬。このうち抗PD1抗体のニボルバブ(商品名オプジーボ)は、一部の悪性黒色腫と肺がん患者に対して保険適用されている。

反省すべき点とはどのようなことでしょうか。

勝俣 まず根拠が希薄な医療に対して反論が十分であったかどうか。免疫細胞クリニックや近藤先生の放置療法に対して反証を挙げて、国民に情報提供して来なかった。国立がん研究センターや学会が行ってもいいはずです。これはメディアも同じです。また近藤先生の極端な主張が国民の一部に支持されている背景には身近にがんの治療で苦しんだ人がいる方も多い。十分な緩和ケアを受ける事なく、過剰な抗がん薬や過剰な治療をされてQOLを損なった方を見て来た方も多いはずです。だから近藤先生の意見にも正しい部分はある。しかし一部に共感して全部信じてしまうから間違った方向に行ってしまう。国民の皆さんには、十分に気をつけてくださいと言いたいのです。

(写真撮影:清水真帆呂)

勝俣範之(かつまたのりゆき)氏
日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授・部長 外来化学療法室長
勝俣範之(かつまたのりゆき)氏 1963年山梨県富士吉田市生まれ。88年富山医科薬科大学医学部(現、富山大学医学部)卒業。88年徳洲会病院で研修開始。92年より国立がんセンター(現、国立がん研究センター)レジデント。自ら、内科各科を研修し、血液腫瘍、骨髄移植、婦人科化学療法に従事。97年に同病院内科スタッフとなる。2011年10月日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授に就任、現在に至る。
この記事は、日経メディカルに掲載された記事を一部再編集したものです。

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