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肌トラブルは全身の不調の表れ 皮膚科医が語る漢方の基本

皮膚科における、漢方の基本的な考え方と処方例

 伊藤和弘=ライター

皮膚科でよく使われる漢方

 まず、代表的なものに駆お血剤(当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸など)がある。

 「お血の人は皮膚が硬く、黒っぽくなっています。目の周りがどす黒く、静脈瘤のある人も多い。こういう人は駆お血剤を使って血液の流れを良くしてあげます。特に実証でお血と水毒がある人には桂枝茯苓丸がよく効きます」(吉木さん)

いわゆる大人ニキビには駆お血剤が使われる。写真はイメージ=(c)wang Tom-123RF

 思春期を過ぎた人のニキビ、俗にいう大人ニキビにも駆お血剤が使われる。大人ニキビに対して、吉木さんは漢方薬だけで治療することが多いという。「実証の人には桂枝茯苓丸、虚証で立ちくらみをしやすいような人には当帰芍薬散を使います」(吉木さん)

 背中やお尻など、体にできるニキビには十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)がいい。

 続いてアトピー性皮膚炎。長引く大人のアトピー性皮膚炎に最もよく使われるのは温清飲(うんせいいん)だ。これは熱を冷ます黄連解毒湯と血行を良くして体を温める四物湯を一緒にしたもの。熱を冷ます薬を清熱剤(せいねつざい)と呼ぶが、黄連解毒湯は代表的な清熱剤。炎症と充血を伴った症状に効果がある。

 特に頭や首のアトピー性皮膚炎には、同じ清熱剤でも白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)がよく効く。「含まれている石膏に熱感を取って肌をうるおす作用があります」(吉木さん)

 褥瘡(じょくそう、(*1))など、加齢や栄養状態の低下などで皮膚が弱くなるのは、漢方では気虚による症状と考える。足りない気を補う補中益気湯のような補剤を使う。薄く、乾燥した皮膚に栄養を与えるイメージだ。気虚に加えて血虚もある場合は同じ補剤でも十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)がいい。

 高齢者の乾燥性皮膚疾患には地黄(じおう)という生薬が入った地黄剤を使うことが多い。

 「老化による動脈硬化や薄くなった皮膚には、八味地黄丸(はちみじおうがん)などの地黄剤を使います。掌せき膿疱症(しょうせきのうほうしょう)で足の裏にうみがたまった膿疱と呼ばれる皮疹ができた67歳の女性がいたのですが、これも八味地黄丸がよく効きました」(吉木さん)

 これから漢方を試したいと思っている方はぜひ参考にしてほしい。

*1 寝たきりなどで、体重で圧迫された部分の血流が悪くなることで、皮膚の一部が赤くなったり、ただれたりすること。「床ずれ」ともいう。

(図版作成 増田真一)

吉木伸子(よしき のぶこ)さん
よしき皮膚科クリニック銀座院長
吉木伸子(よしき のぶこ)さん 1993年横浜市立大学医学部卒業。同年慶應義塾大学病院皮膚科学教室入局。浦和市立病院(現さいたま市立病院)皮膚科などに勤務。その間、米オハイオ州クリーブランドクリニック形成外科、日本漢方研究財団附属渋谷診療所にて美容医療および東洋医学の研修を行う。98年より現職。著書に『噂の女医がこっそり教える女の不調が消える本』(主婦の友社)、『スキンケアは「引き算」が正しい』(青春出版社)、『一生ものの美肌をつくる正しいエイジングケア事典』(高橋書店)など。

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