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「BCGが新型コロナウイルス感染症を予防」は本当か?

 忽那賢志(国立国際医療研究センター国際感染症センター)

この記事は、日経メディカルに2020年4月6日に掲載された記事の転載です。情報は掲載時点のものです。元記事はこちら

 先週、私のトラベルクリニックの外来に米国赴任前にBCGを接種したいという受診者が訪れました。BCGが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防に有効ではないか、という話を聞いて受診したそうです。果たして、BCGはCOVID-19の予防に本当に有効なのでしょうか?

BCGを定期接種している国ではCOVID-19患者と死亡者が少ない?

 medRxivという査読前の論文を掲載するサイトに、BCGを定期接種にしている国と、COVID-19の症例数と死亡数が少ない国との間に相関関係が見られる、という論文が掲載されました。

Correlation between universal BCG vaccination policy and reduced morbidity and mortality for COVID-19: an epidemiological study.

 確かに、BCGを定期接種にしている国(日本、中国、韓国、香港、シンガポールなど)は感染者が少なく、接種をしていない国(イタリア、スペイン、米国、フランス、英国)は多いように見えます。中国は、感染者は多いですが、現在は抑制できています。確かに、相関関係はあるようです。

 既にオーストラリアなど複数の国で、BCGによるCOVID-19予防効果を見る臨床研究を開始する動きがあります。

BCGとは?

 BCGは結核を予防するワクチンの通称であり、このワクチンを開発した研究者の名前であるBacille Calmette-Guerin(カルメットとゲランの菌)の頭文字を取ったものです。Mycobacterium bovisという牛型結核菌を、時間をかけて弱らせてワクチンにした生ワクチンです。

 その効果としては、乳幼児期にBCGを接種することで、結核の発症を70%程度(von Reyn CF. J R Soc Med.2017;110:428-33.)、そして結核性髄膜炎や粟粒結核という重篤な病態を80%程度予防できると報告されています(Rodrigues LC,et al. Int J Epidemiol.1993;22:1154-8.)。

 日本では、生後1年の間(通常生後5カ月から8カ月の間)に接種することになっています。一般的なワクチン接種後にみられることのあるアナフィラキシー反応、発熱、接種部位の腫れなどの副反応に加えて、接種からおよそ2週間後に針の痕に一致して発赤や硬結が生じ、その後化膿してかさぶたを作ることがあります。また、牛型結核菌による感染症である骨炎や全身性BCG感染症がごくまれに起こります。生ワクチンですので、免疫が弱っている方や妊婦さんは接種することができません。

BCGの結核以外の感染症に対する予防効果

 BCGワクチンは結核を予防するためのワクチンですが、結核以外の疾患に対する予防効果も示されています。小児期の呼吸器感染症や敗血症を40~50%減らすこと(de Castro MJ, et al. Clin Infect Dis. 2015;60:1611-9.)や低出生体重児の死亡率を減らすこと(Biering-Sorensen S, et al. Clin Infect Dis. 2017;65:1183-90.)が示されています。

 こうした結核以外の感染症に対してなぜ予防効果があるのかは十分に解明されてはいませんが、BCGが白血球の成分の一つである単球に働きかけて自然免疫を強化するゲノム変化を起こすこと(Arts RJW, et al. Cell Rep. 2016;17:2562-71.)、炎症促進性サイトカイン、特にIL-1Bの分泌を増加させること(Netea MG, et al. Science. 2016 Apr 22;352:aaf1098.)などによるものではないかと推測されています。

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