草むらに注意! マダニが運ぶ殺人病「SFTS」とは
咬まれて1~2週間で発熱、下痢、下血などが現れ、1~3割弱が死亡
高橋義彦=医学ライター
咬まれてから6日~2週間で発熱や消化器症状が出現
国立感染症研究所が発表したわが国のSFTSの患者数は、2013年に報告された第1例を含め計172例(男性79例、女性93例、2016年3月30日現在)。うち46例(27%)が多臓器不全などを起こして亡くなっており、死亡率はかなり高い(最近では10%程度との見方もある)。重症患者は発症後10日前後で亡くなっている。
SFTSの主な発症時期は毎年4~8月で、ピークは5月(図1)。マダニの活動が盛んになる時期と一致する。患者発生地域はほとんどが西日本で、宮崎県、愛媛県、高知県などが多い(図2)。

潜伏期間は、SFTSウイルスを持つマダニに咬まれてから6日~2週間程度。症状は38℃以上の発熱、食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛が中心だ。時に神経症状(意識障害、けいれんなど)や出血症状(歯肉出血、紫斑、下血など)が見られる。出血症状は血小板の減少が著しい場合に起こる。診断を確定するには、血液中のSFTSウイルス遺伝子や抗体を検出する必要がある。
草むらに入る時は「長袖、長ズボン」
最近、新規抗インフルエンザ薬のファビピラビル(商品名:アビガン)がSFTSに有効という動物実験のデータが報告された。慢性肝炎治療薬のリバビリン(商品名:コペガス、レベトールほか)が有効との報告もある。しかし、今のところ有効性が確立した治療法はない。また、SFTSウイルスの血中抗体が今年2月に日本で初めて一般住民から検出され、ワクチンの開発が期待されているが、これもまだ先の話だ。
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