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イベント終了後に考えたApple Watchを評価する3つの視点

 神近 博三=日経デジタルヘルス

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 先日、Apple Japanが東京・六本木で開催したApple Watch発表のプレス向けイベントに参加した(関連記事)。先の記事でも書いたが、米国で開催された特別イベントの動画配信を見るよう参加者に事前通知されていたこともあり、細かい製品説明は省略。いきなりハンズオン形式で、Apple Watchおよび同日発表されたMacBook新製品を触ったり、写真を撮ったりしながら、Apple Japanの担当者にあれこれ質問するというイベントだった。開催時間は1時間弱だ。

 贅沢を言えばキリがないが、担当者にアレコレ質問していると、すぐ後ろに次の順番を待つ記者が並んでくるし、正直、細かく製品チェックができるような状況ではない。結果として、興味のあったいくつかの点を確認して、数枚の写真を撮ったところで時間オーバーになってしまった。

 以下、そのイベントに出席した後に、Apple Watchをどのように評価すべきかで考えたことを記す。

 なお、Apple Watchの18時間というバッテリー持続時間について最初に言っておくと、純然たる時計としては明らかに失格だ。だが、世の中のかなりの人が1日1回は充電するスマートフォン(スマホ)を時計代わりに使っていることを考えると、時計プラスアルファの製品としては、そんなに問題にならないのかもしれない。そもそもApple Watchとセットで利用するiPhoneのバッテリーがそう何日も持たない以上、Apple Watchだけ長期間連続稼働できてもあまり意味がないとも考えられる。

その1:単体で評価しても意味がない

 Apple Watchを単体で評価しても意味がない。それは、携帯音楽プレーヤーのiPodとウォークマンの優劣を単体で比較するようなものだ。iPodがコンテンツ配信サービスの「iTMS(iTunes Music Store)」を含めたエコシステム全体で真価を発揮したように、Apple Watchの真価は、Apple Watchならではのユーザーインターフェースを生かしたアプリケーションがどれだけ登場するかにかかっている。

 日本時間2015年3月10日のApple Watch発表直後には、1台のApple Watchの画面に描いた絵や文字を、別のApple Watchの画面に同期表示する内蔵アプリ「スケッチ」がテレビのニュース番組で盛んに紹介された。あの時点では目に見える機能があれぐらいしかなかったため仕方がないのだが、あれを見て「Apple Watch欲しい」となる人はそんなに多くないのではないだろうか。

 米Apple社のApple Watchサイトを見ると、3月26日現在、Apple Watch向けに提供される予定のサードパーティ製アプリが多数紹介されている。そこには「Twitter」「Evernote」「Instagram」といった定番のネットサービス用アプリはもちろん、大手の航空会社やホテルチェーンの予約アプリ、米Nike社のランニングアプリ、ドイツBMW社の電気自動車「BMW i」のバッテリー残量チェックアプリなど30以上のアプリが展示されている。

 発表された情報を見る限り、Apple WatchはiPhoneと組み合わせて利用することが基本であり、単体で実現できる機能はあまりない。そして、これらサードパーティ製アプリの多くはiPhone版も提供されている。だとすれば、Apple Watchが価値を認められるためには、iPhone版アプリとは違った、Apple Watch版だけのユーザーエクスペリエンスを提供する必要がある。

サイクルコンピューターとなるアプリに興味

 筆者が個人的に興味を引かれたアプリの1つに、ランニングやサイクリング中の高度上昇レベル、平均速度、距離、心拍数をリアルタイムで表示・記録する「Strava」がある。Apple Watchのスポーツモデルである「Apple Watch Sport」の価格は4万2800円(税別)だが、StravaとApple Watch Sportの組み合わせを心拍センサー付きのサイクルコンピューターと考えれば、それだけで1万円ぐらいは元を取った気になる。サイクリング中にiPhoneを取り出して画面を確認するのは面倒だが、Apple Watchならちょっとした信号待ちの最中に自分の心拍数や走行距離を素早くチェックできる。そもそも、心拍センサーはApple Watchにしか付いていない。

 Apple Watch版Stravaの価格は不明だが、App StoreにはiPhone用の「Strava GPSランニング&サイクリング」というアプリがある。初期料金は無料というので試しにインストールしてみた。「他のアスリート会員と走行タイムを比較する」「目標設定」などの機能を利用できるプレミアム会員では月間600円または年間5800円の追加料金(いずれも税込)が発生するものの、走行距離を確認したり記録したりするだけなら無料のまま利用できるようだ。

イベント会場に展示されていたApple Watch Sport

 このほか、米LINE 6社のギターアンプ「AMPLIFi」のコントロールアプリもある。AMPLIFiは内蔵のDSPを使って音源に様々なエフェクターをかけることができるギターアンプなのだが、Apple Watchのアプリを使えば、プリセットした音色を手元で選択できるようになる。

 AMPLIFiのコントロールペダル「FBV Express MKII」はネットで見ると1万5000円はする。AMPLIFiアプリのiPhone版やiPad版は無料で提供されているので、Apple Watch版も無料となる可能性は高い。AMPLIFiユーザーでFBV Express MKIIをまだ購入していなければ、Apple WatchとAMPLIFiアプリの組み合わせで1万円程度は元を取れた気になるかもしれない(差し引いた5000円はFBV Express MKIIのボリュームペダルの分)。

その2:音声認識が大きな役割を果たすはず

 Apple Watchの画面はスマホに比べると相当小さい。タッチパネルのソフトキーボードで長いテキストを入力することは、ほぼあきらめたほうがよさそうだ。プルダウンなどメニュー選択方式のインターフェースも、込み入った内容は厳しくなる。そうなると、Appleお得意の音声認識機能が、重要な役割を果たす場面が増えてくるはずだ。

 例えば、メールなどのコミュニケーション機能をApple Watchで使おうとすると、音声認識でメッセージを入力することが当たり前になるだろう。滑舌が悪くて音声をうまくテキストに変換できない人は、音声入力を音声ファイルにしてメールに添付してやればいい。

 前述のサードパーティ提供のApple Watchアプリにしても、音声認識機能をうまく生かせるかどうかでユーザーの満足度は大きく変わってくる。特にランニングやサイクリング中のアプリ操作は、音声認識がデフォルトになるだろう。Apple Watchの評価は、それらの出来栄えを見てから判断すべきだと思う。

その3:100万円超の高級モデルについては何も言えない

 Apple Watchには、100万円を超えるハイエンドモデル「Apple Watch Edition」がある。筆者は普段、腕時計をしておらず、必要があればスマホで時刻を確認している。数十万円はおろか、最近では数万円の時計を買おうと考えたこともない。こうした人間が、世界中の高級デパートやブティックで富裕層に向けて販売されるApple Watch Editionについて、あれこれ利いたふうな口をきくべきではない。

 もちろん高級時計の門外漢は門外漢なりに、気になることがある。例えば、100万円を超える時計が、バッテリーがヘタっただけで使えなくなるのでは残念すぎる。バッテリーは交換できるのか、できるとしたらいくらぐらいかかるのか。Apple Watchに小型のLTEモジュールを組み込めるようになったら、貴金属製のケースはそのままにして内部だけを交換できるのだろうか。いっそのこと100万円超モデルはユーザーが死ぬまでメンテナンスフリーにして、画期的な技術革新があったら無償で新品に取り替えてくれてもいいのではないだろうか。

 東京・六本木のイベントでは、こうした疑問をApple Japanの担当者にぶつけてみた。担当者はしばらく押し黙った後、「私を含めて、そうした質問にお答えできる人間はここにはいないと思います」とだけ答えてくれた。

 会社に戻ってからApple製品に造詣の深い先輩社員に同じような疑問を述べて、「どう思いますか」と尋ねてみた。その答えは「でもね、そういう細かい損得を気にする人は、そもそもApple Watch Editionを買おうとは思わないんだよ」というものだった。

 確かに、Apple Watch Editionの購買層となる人たちは「このアプリを入れたら、×円分の元が取れる」とかは考えないだろう。そこで前述のような結論に至った次第である。

この記事は、日経デジタルヘルスからの転載です。