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脳梗塞、認知症のリスクを高める心房細動 息切れや動悸に注意

 梅方久仁子=ライター

心房細動による悪影響とは

 心房細動は、いろいろな悪影響を体に及ぼす。心房細動と診断されると、死亡リスクは高くなる。死亡リスクについては、多くの研究がなされており、それらを平均するとだいたい1.5~3.5倍になるといわれている。

心房細動新規発症による予後への影響
この研究ではリスクは2.9倍(Eur Heart J. 2005 Jul;26(13):1303-8.)

 死亡リスクが高くなる原因のひとつは、慢性心不全だ。心房細動が起こると心臓がうまく働かなくなるので、なんとかしようと無理をするうちに、心房が傷んで元に戻らなくなる。これをリモデリングという。また、神経を刺激する物質が活発に出て、交感神経の緊張が続く。すると、さらに心房細動が起こりやすくなり、悪循環に陥ってしまう。

 心房細動は、脳梗塞を起こしやすいことも問題だ。しかも、心房細動による脳梗塞は、重症になりやすい。

 「心臓がけいれんしたような状態では、心臓の中で血液の流れがよどみ、血栓ができやすくなります。心臓でできた大きな血栓が脳まで運ばれて太い血管に詰まると、命に関わるような重大な脳梗塞を起こします。たとえ一命を取り留めても、半身まひや寝たきりなど、重い後遺障害が残る確率が高くなります」と妹尾さん。

 脳梗塞を防ぐために、心房細動と診断されると、血液をさらさらにする薬(抗凝固薬)を飲み続けることになる。

 「薬を飲んでいれば脳梗塞リスクを下げられますが、1日でも飲み忘れると効果がなくなってしまいます」と妹尾さんは言う。

 しかし、何年もの間、毎日薬を飲み続けることは難しい。何年かたつと飲み忘れなどが増え、約半数の人が飲み続けられなくなってしまう。

 「患者さん自身に治療に向き合っていただけるように、心房細動患者さん専用の服薬管理アプリを開発しました。うっかり飲み忘れを防ぐために朝晩アラームを鳴らしたり、飲んだ記録を付けたりできるほか、薬を飲み続ける重要性を理解していただくために、心房細動について解説する動画を何本か収録しています」(妹尾さん)

妹尾さんらは、服薬忘れを防ぐ「心房細動アプリ」を開発した。
[画像のクリックで拡大表示]

 妹尾さんらが開発した「心房細動アプリ」は、iPhone用とAndroid用があり、どちらも無料でダウンロードできる。「心房細動アプリ」で検索すると出てくるので、ダウンロードしてみよう。動画では、心房細動の起こる原因や治療方法がわかりやすく説明されている。

認知機能低下や、生活の質の低下も

 最近では、心房細動と認知機能の低下、つまり認知症との関係が注目されている。海外の研究では、心房細動の人はそうではない人に比べて1.4倍認知症になりやすいことがわかった(*1)。別の研究では、アルツハイマー型、脳血管性など、すべてのタイプの認知症になりやすくなるという(*2)。

 心房細動は脳梗塞を起こしやすいため、当然、脳血管性認知症を起こしやすい。脳梗塞を防ぐために抗凝固薬を飲むと出血が起こりやすいため、脳内に微小の出血を起こし、認知機能が低下する可能性がある。また、心不全で血液の流れが悪くなるため脳の血流も悪くなることや、糖尿病など慢性疾患を併発しやすいため、その影響も考えられる。

 心房細動患者の60%は、生活の質が落ちているという報告もある。動悸や倦怠(けんたい)感といった症状、併発する心不全や脳梗塞の症状と長期の療養生活、さらに、いつ次の発作が起きるかもしれないという精神的な抑うつ状態や不安。このような状態になれば、生活の質が著しく下がっても不思議ではない。

*1 Ann Intern Med. 2013;158:338-46.
*2 Heart Rhythm. 2010; 7: 433-437

心房細動は、徐々に進行する

 心房細動は、4割くらいの人は症状がまったくない。軽い息切れや動悸の症状があっても、見過ごしているうちに慣れて感じなくなるケースもある。だから早期発見が難しく、気付かない間に心房細動になってしまっている人もかなりいる。

 最初は短時間の心房細動が、ときどき発作的に起こる。それがだんだん頻繁に起こるようになる。さらに進むと長時間持続するようになり、最終的には慢性化する。そして、心臓自体が変質すると、もう元には戻らない。

 「そうなると治療はできず、心房細動と共に生きていかざるを得なくなります。たとえ抗凝固薬を飲んで脳梗塞を予防できても、長期的には認知機能が低下してくる可能性が高いと考えています。また、生活の質が大きく低下していきます。ですから、心房細動を早く見つけて治療をすることは、とても大切です。もちろん、心房細動になる前に予防ができたらいちばんいいのですが」(妹尾さん)

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