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「月に5日だけ」のインターバルダイエット、続けやすく減量以外の利点も

 塚越小枝子=ライター

「今年こそはメタボを解消する!」と意気込んだものの、年末年始についた脂肪がすっかり体に定着した人もいるだろう。ダイエットはいかにライフスタイルに溶け込ませ、無理なく長続きできるかが成功のカギを握る。一念発起してもなかなか長続きしないとお悩みなら、休み休み続ける「インターバルダイエット」を試してみてはどうだろう。自身もインターバルダイエットを実践し、効果を実感しているという、慶應義塾大学医学部眼科学教室教授で日本抗加齢医学会理事でもある坪田一男さんに話を聞いた。

断続的に一定のカロリー制限を行うメリットは?

毎日食事制限をしなくても、毎月5日間だけ食事制限すればやせられる、そんな研究が出てきています。写真はイメージ=(c)Andriy Popov-123rf

 やせるには、摂取エネルギー(カロリー)を減らして消費エネルギーを増やすのが基本であることはご存じだろう。近年のアンチエイジング研究では、栄養を十分に確保しながら1日の総摂取エネルギー量を7割程度に制限する「カロリス」(カロリーリストリクション=Calorie Restriction)が、単にやせるだけでなく、長寿遺伝子を活性化して老化を防ぎ、健康長寿につながるという報告がなされ、注目されてきた。

 「しかし、カロリスは筋肉が減る、骨が弱くなる、免疫力が低下するなどマイナス面もあることが分かってきました」(坪田さん)

 そもそもカロリスは長く続けるのが困難だ。「腹八分目」がいいとは分かっていても、物足りなくて反動でつい食べ過ぎてしまい、リバウンドすることがある。また、おいしい食べ物があふれている中で「常に我慢を続ける」ことは、それだけでストレスになる。その上マイナス面も考慮しながらとなると、一般の人がカロリスを習慣化するのはなかなか難しいのが現実ではないだろうか。

 そこで近年、いくつかの研究報告が相次いでいるのが「Fasting Mimicking Diet(FMD)」と呼ばれる、断続的に一定のエネルギー制限を行う方法だ。

 米国の生物学者、ロンゴ博士を中心とするグループが、摂取エネルギーを常に7割に制限するのではなく、一定期間だけ制限してまた元に戻すといったインターバルを置きながらの動物を使ったダイエット実験を重ねるうち、カロリー制限は休み休み行うと効果があるということが分かってきたのだ。

毎日、食事制限が続くのはつらいけれど、月に5日間だけならハードルが低い!?。写真はイメージ=(c)loganban-123rf

 ロンゴ博士らのグループは、健康な男女100人を対象とした研究で、1カ月のうち5日間だけ摂取カロリーを制限するFMDを3周期実施して、その効果を検証している。「カロリー制限期間の1日目は1100kcal程度、2~5日目は720kcal程度に摂取エネルギー量を抑え」(*1)、炭水化物とたんぱく質は抑えめ、脂肪は多めの食事をしてもらったという。

 この研究の結果、「脂質異常や高血糖の傾向にあった人で、体重や血圧、空腹時血糖、中性脂肪値やコレステロール値、炎症のマーカーとなるC反応性たんぱく、糖尿病の発症やがんの成長に影響するインスリン様成長因子1(IGF-1)に改善が見られた」(*1)(Sci Transl Med.2017 Feb15;9(377).)。

膵臓の機能が回復し、糖尿病の症状が改善?

 ロンゴ博士らのグループによるマウスの実験では、FMDによって、糖尿病モデルマウスの膵臓(すいぞう)のβ細胞が再生し、糖尿病の症状の改善も見られたという。「糖の代謝をコントロールするホルモン、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞は、一度壊れてしまえば元に戻らないというのが通説」(*1)。ところがβ細胞が再生することが分かったのだ。さらに「ヒトの膵臓から採取したβ細胞を、カロリー制限食を模した培養液で36時間培養したあと通常の培養液で培養したら」(*1)、大部分のβ細胞が壊れてしまう1型糖尿病のヒトのβ細胞でさえ、インスリンを作り出す機能が回復することも確認されたという(Cell. 2017 Feb 23;168(5):775-788.e12)。

 「そのメカニズムはまだはっきりとは分かっていませんが、カロリーを制限する5日間のうちに体内の幹細胞(ステムセル)が増えるようです」(坪田さん)

 幹細胞とは、分裂して自分と全く同じ細胞を作る能力と、さまざまな別の種類の細胞に分化する能力を持つ、組織や臓器のもととなる細胞のこと。「5日間のカロリー制限であえて飢餓状態に近い状態にすることによって、幹細胞がなんとか生き延びようとさまざまなファクターを出して増えるのではないか。そして、それにより膵臓のβ細胞が再生するから血糖値が高い人は下がるのではないでしょうか。ちなみに、FMDを行うと、記憶力が良くなったり、カロリー制限中にたんぱく質摂取を減らすにもかかわらず筋肉が落ちないという効果もあるようです。これも幹細胞が増えることで脳の海馬の細胞や筋肉の細胞が増えることと関係していると思われます」(坪田さん)

 詳しいメカニズムの解明には今後の研究成果が待たれるところで、FMDの効果についてもまだ科学者たちの間で一致した見解は得られていないという。

 「何よりロンゴ博士らが研究で行っている方法を一般の人が厳密にその通り行うのは困難です。しかし、考え方を取り入れることは簡単です。絶食のような極端な方法ではなく安全でもあるので、『これならできそう』と思える形でやってみるとよいのではないでしょうか。ちなみに、FMDは直訳すれば『断食模倣食』という意味ですが、断食という言葉は全く食べないと誤解する人もいるので使いたくありません。一定の間隔を置いてダイエットをするということで、『インターバルダイエット』と呼んではどうでしょうか。実は私もこの8カ月、インターバルダイエットを行っています」(坪田さん)

1カ月のうち5日だけ摂取エネルギーを半分に

 FMDのエッセンスを取り入れた坪田さん流「インターバルダイエット」のポイントは以下の通りだ。

*1 慶應ヘルスサイエンスニューズレターVol.15より
【インターバルダイエットの方法】
  • 1カ月のうち連続する5日間だけ総摂取エネルギーを通常の半分にする
  • それ以外の25~26日はビタミンや食物繊維など栄養をバランスよくとれる通常の食事にする
  • 炭水化物・たんぱく質を減らし、脂肪は多めでよい
  • 摂取エネルギーが半分になる5日間は、極端に激しい運動は避ける
坪田さんの場合、毎月最後の5日間に食事制限をしている(c)annavee-123rf

 「5日間連続で摂取エネルギーを半分にすることと、炭水化物・たんぱく質を減らし、脂肪は多めということさえ意識すれば、あとはどんな食べ方をしても大丈夫」と坪田さんは言う。例えば「朝食・昼食はほぼ通常通りに食べて夕食だけ抜く」といったやり方でもいいし、「朝、昼、晩の食事をそれぞれ通常の半分にする」という方法でもいいそうだ。

 坪田さんの場合は、もともとプロテインをパウダーで1日40gとる習慣があるため、エネルギー制限中の5日間はそれをやめ、野菜やきのこ類中心の食事にするだけでかなりたんぱく質を減らすことができるそうだ。加えて期間中は卵の白身を食べずに黄身だけにするなどしているという。

 こうして毎月、月末に5日間だけカロリー制限をする生活を8カ月間実践してきたという坪田さんは、もともと体質的に高めだった空腹時血糖値が正常の範囲内に下がり、通常食の25日の間も体調の良さが続くのを実感しているという。

 しかも、5日間のカロリー制限中はたんぱく質を制限するにもかかわらず、インターバルダイエットを始めてから筋肉は落ちないどころか、逆についたという(ただし、カロリー摂取が半分になる5日間は、極端に激しい運動は避けたほうがよいそう)。

 あなたもこのように、自分のライフスタイルの中で続けやすい方法を探してみてはどうだろうか。ただし、持病がある方は医師に相談して。いろいろ試すことでダイエットの5日間が我慢ではなく楽しみになれば、「いつのまにかやせていた!」ということになるかもしれない。

■変更履歴 本文中で紹介した論文内容については慶應ヘルスサイエンスニューズレターVol.15からの引用であることを明記しました。 [2018/06/28]
坪田 一男(つぼた かずお)さん
慶應義塾大学医学部眼科学教室教授、慶應義塾大学SFC研究所ヘルスサイエンス・ラボ共同代表
坪田 一男(つぼた かずお)さん 1955年生まれ。慶應義塾大学医学部卒業。ハーバード大学留学、クリニカルフェロー修了。2000年よりアンチエイジング医学を学び、医療界に導入。日本抗加齢医学会理事、日本再生医療学会理事、学会誌『アンチ・エイジング医学』の編集長などを務める。『あなたのこども、そのままだと近視になります。』(ディスカヴァー携書)など著書多数。