糖質制限ダイエットは本当に安全か?
総カロリーの3~4割に抑えると、死亡やがんのリスクが上昇
大西淳子=医学ジャーナリスト
糖質割合が低下するにつれて死亡リスクが上昇
2本目は米ハーバード公衆衛生大学院のTeresa Fung氏らが「Annanls of Internal Medicine」誌2010年9月7日号に報告した、米国の男女の医療従事者を対象とする大規模かつ長期的な研究に関する論文です(*3)。
心臓病、がん、糖尿病ではない女性を26年間、男性を20年間追跡し、定期的に食物摂取頻度調査を行って、参加者の糖質と脂肪、たんぱく質の摂取量を推定しました。糖質の摂取量が少なかった人々については、動物性脂肪と動物性たんぱく質を主に食べていた集団(動物性食品群)と、植物性脂肪と植物性たんぱく質を主に食べていた集団(植物性食品群)にさらに分類しました。
追跡開始時点で34歳から59歳だった8万5168人の女性と、40歳から75歳だった4万4548 人の男性のうち、1万2555人の女性(循環器疾患による死亡が2458人、がんによる死亡は5780人)と8678人の男性(循環器疾患による死亡は2746人、がん死亡は2960人)が死亡していました。
高糖質食(総摂取熱量の60%程度)の人々と、低糖質食(35~37%)の人々を比較したところ、総死亡リスクは低糖質食の方が12%高く、さらに低糖質+動物性食品群では23%高くなりました。低糖質+動物性食品群では、循環器疾患による死亡のリスクが14%、がん死亡のリスクも28%高くなっていました。一方、低糖質+植物性食品群では、高糖質群より総死亡のリスクが20%、循環器疾死亡のリスクも23%低くなりました。がん死亡のリスクには差は見られませんでした。
この研究で認められた総死亡やその他のリスクの上昇は、総摂取熱量に対する糖質由来の熱量の割合が低下するにつれて大きくなっていました(負の相関関係あり)。
これら2件の論文では、糖尿病ではない一般人にとって、糖質制限食は、余命短縮に結びつく可能性が示唆されました。特に、糖質を極端に制限し、肉をたくさん食べ、バターやマヨネーズを好んで摂取する食生活では、リスクが大きくなると考えられます。糖質制限の利益とリスクをよく知った上で、実施するのであれば、自分に合ったレベルの糖質制限を短期的に行う方法が好ましいのではないでしょうか。