糖質制限ダイエットは本当に安全か?
総カロリーの3~4割に抑えると、死亡やがんのリスクが上昇
大西淳子=医学ジャーナリスト

糖質の摂取量を大きく減らし、肉や魚をしっかり食べる糖質制限(ローカーボ/低炭水化物)食は、糖尿病患者の食事療法として広がったものですが、継続しやすく、短期間で減量でき、各種検査値にも改善が見られることから、ダイエット法としても取り入れられています。
ところが先日、糖質制限ダイエットの経験を広く発表していた作家の桐山秀樹氏が急に亡くなり、糖質制限の安全性についてにわかに不安を感じた人が少なくなかったようです。
桐山氏ひとりの体験(開始から3週間で20kg減量、4カ月後に糖尿病からの脱出に成功、62歳で急死)を、糖質制限ダイエットを実践している全ての人に当てはめることはできません。あくまで、このダイエットをしていた1人に生じた出来事で、糖質制限と死亡の因果関係は不明です。
では、大勢の人を対象に、糖質制限が健康、特に死亡に及ぼす影響を調べた研究はないのでしょうか。探してみると、結構な数の論文が見つかりました。
その前に、糖質制限についての基本的な情報を整理してみましょう。
糖質とは?
糖質とは、炭水化物から食物繊維を除いたものです。糖質は体内に入るとブドウ糖になり、脳、神経組織、赤血球、腎尿細管、精巣や、酸素不足の骨格筋のエネルギー源になります。これらの組織は、通常ブドウ糖のみをエネルギー源としています。糖質1gは4kcalのエネルギーになります。
体の機能を維持するために必要な糖質の量は?
脳は基礎代謝量(安静にしている状態で消費されるカロリー)の20%を消費します。基礎代謝量を1500kcal/日とすると脳のエネルギー消費量は300kcal/日(糖質の量にすると75g)で、脳以外の組織が消費するブドウ糖の量も加えると、1日に最低でも100gの糖質(400kcal分)が必要と考えられています(*1)。
糖質摂取の目標量は?
「日本人の食事摂取基準」(2015年版)(*1)は、日本人の小児と成人について、十分な根拠はないものの、総摂取熱量(食事によって取り込んだカロリー)の50%~65%を炭水化物から摂取することを目標として示しています。
45歳男性ビジネスマンの場合を例として挙げます。平均的な身長170cm、体重70kgで、身体活動量は中程度の人の基礎代謝量は1570kcal/日、現在の体重と活動を維持するために必要なカロリーは2750kcal/日程度です。したがって、脳の機能の維持に必要な糖質は78.5g。目標とする炭水化物摂取量は1日当たり343g (1375kcal)から446g(1787kcal)になります。ちなみに、白飯1膳(150g)に含まれる炭水化物は55.7g、うち糖質は55.2gです。
