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災害は体調悪化の引き金に 不足させたくない5つの栄養素

災害時の栄養を考える(2)

 塚越小枝子=ライター

災害時の食4つの基本

 では、健康を守るためにどんなことに気をつけたらよいのだろうか。笠岡さんによれば、災害時に元気に過ごす基本は以下の4点だ。これは日常の健康管理にも通じる。

【災害時に元気に過ごす基本】

(1)

水分をとる

(2)

栄養をしっかりとる(まずはエネルギー、次にたんぱく質、水溶性ビタミン類)

(3)

安全(衛生的)に食べる

(4)

体を動かす

 災害時、優先的にとりたい栄養素については、厚生労働省が避難所における栄養基準を示しているので参考にしたい。エネルギーとなる「炭水化物」が必要なのは言うまでもないが、炭水化物を燃焼させる補酵素の役割を果たす「ビタミンB群」がなければうまくエネルギーを作り出すことができない。

 また、「たんぱく質」は血液や筋肉などの材料になるだけでなく、感染を防御する免疫物質の多くもたんぱく質で作られている。「ビタミンC」には抗酸化作用があり酸化ストレスに抵抗する作用がある。ビタミンB群やビタミンCは水溶性で体内に蓄積することができないため、こまめに補給する必要がある。

 「栄養素の欠乏症は1カ月くらいで出てくることが多いので、発災後4日から1カ月の間、この5つの栄養素が不足しないように気をつけてください」(笠岡さん)

カッコ内は1歳以上の1日当たりの目安量で、「避難所における食事提供の計画・評価のために当面目標とする栄養の参照量」(厚生労働省)を基に作成。家庭での食料備蓄もこの量を満たせるように考えたい
カッコ内は1歳以上の1日当たりの目安量で、「避難所における食事提供の計画・評価のために当面目標とする栄養の参照量」(厚生労働省)を基に作成。家庭での食料備蓄もこの量を満たせるように考えたい

 基本的には、脱水症や栄養不足による欠乏症に注意して「しっかり食べる」ことが重要だ。栄養が偏ると、風邪やストレス、疲労などにつながるため、できるだけ野菜や魚介類などのおかずを増やしてたんぱく質やビタミン類も摂取するよう心がけたい。ただし、発災からの時期によって、注意すべきポイントは変わってくることもあるので注意しよう。食料が安定して届くようになってからは、血圧・血糖値の悪化から慢性疾患を招かないよう、逆に「食べる量をコントロールする」時期となる。

 なお、被災地では洗浄・殺菌の資材が不足すること、全体に衛生状態が悪くなりがちで、食べる人の抵抗力も低下気味になることなどから、食中毒も発生しやすい。可能な環境なら手洗い・消毒を徹底する、食べ物に直接触れずに袋を持って食べる、食事を取り置きしない、といった注意も必要だ。

 過去の大規模災害の経験から、避難生活の長期化等によって死亡する「災害関連死」をどう防ぐかが課題となっている。「過酷な環境のもとで、命をつなぎ健康を維持する根本は食事です。いざという時に自分で食事をコントロールし、栄養を改善できる知識とスキルを持つことが重要です」と笠岡さんは強調する。

 次回は、糖尿病などの慢性疾患を持つ人の食事と備蓄について、具体的にどんなことに注意したらよいか、詳しくお伝えする。

(図版作成 増田真一)

笠岡(坪山)宜代[かさおか(つぼやま)のぶよ]さん 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所国際栄養情報センター国際災害栄養研究室室長
笠岡(坪山)宜代[かさおか(つぼやま)のぶよ]さん 1997年高知医科大学大学院博士課程修了(医学博士)。99年国立健康・栄養研究所入所。2018年より現職。分子栄養研究を経て災害時の食・栄養問題について研究。日本の政府関連機関で初めての災害栄養専門部署を立ち上げる。東日本大震災、西日本豪雨等において栄養支援の陣頭指揮を執る。

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