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救急車は頼れない!? 知っておきたい災害時の医療体制

災害時、自分を身を守るには?

 塚越小枝子=ライター

 自分が判定される立場になった場合、可能な状態なら、負傷した状況や今の状態を判定者に伝えるとよい。特に倒壊した家屋や家具などに長時間挟まれていた場合は、後になって「クラッシュ症候群(圧挫症候群)」(挟まれている間にダメージを受けた筋肉の細胞から毒性のある物質が環流し、不整脈を誘発する)を発症することもあるため、できるだけ伝えておきたい。救出された直後は軽症のように見えても、急変して死に至る場合もある。

 また、基礎疾患(心疾患、呼吸器疾患、糖尿病、肝硬変、透析等)のある人や妊娠している人も申告するほうがいい。基礎疾患のある人、妊婦、小児、高齢者、外国人などの災害弱者は、軽症でも必要に応じて待機的治療群(黄色)に分類される。

<心得3>遠方に搬送されることもあり得る

 トリアージの結果、ヘリコプターなどで被災地外の医療機関に搬送される(広域医療搬送)可能性があることも知っておきたい。先述のように被災地の医療ニーズが供給量をはるかに超えてしまい、地域内では病床も高度な医療を提供できる医療機関も不足するからだ。

 「阪神大震災の時は、初日の広域医療搬送がたった1人でした。もっとできていたら救えた命がいくつもあったのではないかという反省を踏まえて、ドクターヘリによる広域医療搬送システムが見直されてきました」(久野さん)

<心得4>災害時の診療は救護所で

 急性期(72時間から1週間)以降、最も身近で医療を提供する拠点となるのは、避難所に設置される「医療救護所」だ。その運用を担う中心となるのは主に地元の開業医ら。診療再開も目指しつつ救護所の対応も行うため、しばらくは、かかりつけ医のクリニックへ行っても休診で、救護所で診療してもらうということも想定される。ただし、地域によって災害時の計画は異なるので、住んでいる地域でどのような計画になっているのか確認しておくとよいだろう。

災害に備えて一人ひとりができること

 いざというとき、自分や周囲の人について対処の方法を考える際にも、トリアージの手法が目安になる。つまり、自力で歩ける場合は「軽症」と考えていい。反対に、呼びかけても反応がない、吸の異常がある(速い・遅い)、脈拍を感じられない、大量に出血している、といった場合は危険度が高いため、速やかな搬送・治療が必要だ。搬送されるまで、傷病者は横向きに寝かせるのが基本(図1)。また、けがの応急処置として圧迫止血の方法は知っておこう(図2)。

 なお、「ターニケット」と呼ばれる止血帯が効果的であることが分かり、医療・消防の現場でも導入が進んでいるという。市販のターニケットを備えておくのも一策だ。

衣服のベルトなどを緩め、嘔吐(おうと)したものが気道をふさいで窒息する事態を防ぐため横向きに寝かせる。あおむけになってしまうのを防ぐため上側の膝を曲げる
出血している傷口を完全に覆うようガーゼや清潔な布などを当て、手や包帯などで強く圧迫する(感染予防のため、手はゴム手袋やビニール袋などを着用し、血液に直接触れない)

 長期化する避難生活の中では、「エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)」(長時間足を動かさないと、血行不良で血が固まりやすくなり、できた血栓が肺の血管に詰まることがある)に注意しよう。特に車中泊を続けるなど体をあまり動かさないでいると、リスクが高まる。

 その他、夏場は熱中症やあせもなどの皮膚障害、冬場はインフルエンザやノロウイルスによる胃腸炎などの感染症、低体温症などに注意が必要だ。栄養の偏りによる体調不良や基礎疾患の悪化も招きやすく、メンタルヘルスも含めた継続的な体調管理が重要になる。避難所などでは自分が飲んでいる薬が分からない人も多いという。常用している薬の名称や必要量をしっかり管理し、医療者に伝えられるようにしておくことも備えの一つだ。

 「2018年夏の豪雨災害では、酷暑の中、洪水の水が引いた後の片付け作業で、汗をかいたところに砂ボコリをかぶって皮膚が荒れる人が多くいました。残った土砂が乾燥すると舞うので、砂ボコリが目に入って目の障害を訴える人も多く診療しました。災害の種類によって、皮膚科や眼科などの専門的な医療も必要になります」(久野さん)

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