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箱根駅伝優勝の青学、5選手が東京マラソンに挑戦

レース前にやっておきたい動的ストレッチとは?

 松尾直俊=フィットネスライター

箱根駅伝で2年連続の総合優勝を成し遂げた青山学院大学陸上競技部(以下、青学)。1区から全く首位を譲ることのない完全優勝を勝ち取ったのは、原晋監督が選手のやる気と潜在能力を引き出す指導を行ったことが大きい。しかし選手たちが競技能力を向上させた背景には、普段はあまり着目されることがないフィジカルトレーナー、中野ジェームズ修一氏の存在があった。
安定感と強さを兼ね備えた走りを実現するためのトレーニング法(第1回)、具体的な走り方(第2回)、そして筋トレで効果を上げるために欠かせない考え方(第3回)をこれまでお伝えしてきた。この最終回では、青学の長期戦略と、走る前に行いたい動的ストレッチを紹介する。

 箱根駅伝(正式名称:東京箱根間往復大学駅伝競走)の往路5区間107.5km、復路5区間109.6km。合計217.1kmを10人でタスキをつなぎ、総合10時間53分25秒で2年連続優勝した青学チーム。彼らのこの強さの裏側には、綿密に立てられたトレーニングプランとそれを実践した選手たちの努力があった。しかし彼らのチャレンジはこれで終わったわけではない。箱根から東京へ、そして世界へと走り出そうとしている。

青学の駅伝選手たちにレクチャーする中野ジェームズ修一さん。選手たちのチャレンジはまだ続く。
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体幹トレーニングは4年計画の3年目に

 「箱根駅伝では1区から良い勢いをつけ、それを全選手が受けてタスキをつないだこと。そしてマネージャーも含めて油断なく準備を進めて実践したことが、完全優勝につながったのだと思います。私はそのほんの一部を受け持っただけ。優勝は、原監督のトータルマネージメントの力、それを確実に身に付けた選手たちの努力の賜物です」(中野さん)

 2014年4月から青学にトレーナーとして加わった中野。彼が指導する体幹の筋力トレーニングは全4年間(フェーズ1~4)の期分けで計画されており、箱根駅伝に連覇するまでのトレーニングはまだフェーズ2の段階だという(過去記事「箱根駅伝、青学躍進の陰に“理詰め”の体幹トレーニング【前編】」を参照)。

 「競技能力を上げるための筋力強化トレーニングは、1カ月や2カ月で終わるものではないんです。また、結果も短期間で出るものではありません。年単位の計画と積み重ねが必要なんです」(中野さん)

 まだ、道半ば。中野の言葉からはそんな意味合いが伝わってくるようだ。しかし青学のフィジカルコーチ就任2年目で完全優勝の成績を収めることができたということは、彼の計画と実践方法が正しかったことを証明している。

青学の体幹トレーニングはいよいよ3年目のフェーズ3に入る。
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 中野が2014年4月に入ってから2014年度末までがフェーズ1。そこでは主に、体幹の安定力を作ることを主眼としてトレーニングを組み立てた。

 「続いて私の参加から2年目となる2015年度のフェーズ2では、上半身のひねりを利用してストライドを伸ばしたり、エネルギーを効率的に使ったりする走りを目指したトレーニングプログラムを導入しました。3年目のフェーズ3は今年の春合宿から始まりますが、プランは…まだ秘密です(笑)」(中野さん)。

 青学の選手たちのさらなる進化が期待できそうだが、今後はチーム内でのレベル差をいかに埋めるかが課題になりそうだ。

 「今の2年生が4年に上がった時に、全てのフェーズが完了する予定なんです。でも、大学の場合は毎年、4年生が卒業して新たな1年生が入ってきます。次第に上級生のトレーニングが高度になってくると、新入生が追いつくのが難しくなってくるので、練習メニューをどう区別するかで悩むかもしれません。その意味では、終わりがありませんね」(中野さん)。

青学から5名が東京マラソンに出場

 青学の選手たちには既に駅伝の次の目標が待っている。

 「もともとはフルマラソンまでを見据え、そこで記録を出せる選手になってもらうことを考えてやっています。しかしまだ、そのレベルのトレーニングまでには達していないというのが正直なところです」(中野さん)

 箱根駅伝のように20km余りを速く効率的に走るのと、フルマラソンの42.195kmを同じように走りきるのでは、体幹の使い方や強化すべき能力も違ってくる。ただ、青学の選手たちは、着実に能力を伸ばしているのは確かだ。そして箱根駅伝を走ったメンバーからの3名に加え、2名の選手がリオデジャネイロ五輪への参加選手選考会を兼ねた、2月28日に行われる『東京マラソン2016』へ出場する

参加選手
 渡邉利典(4年)、一色恭志(3年)、下田裕太(2年)
  (ここまで、箱根駅伝参加選手)
 橋本崚(4年)、池田生成(3年)

 「私個人としては、今までのトレーニングがフルマラソンでどう活かされるのかを見てみたいというのがあります。ただ、42.195kmで日本記録が出せるほどになるには、もっと個々の選手に合わせたトレーニングメニューを厳選する必要があると思っています」(中野さん)

 もっとも、青学の選手たちは十分な実力を宿しているように感じるファンも少なくないだろう。もしかしたら、青学メンバーの中から第10回を迎える東京マラソンで好成績を収めて、リオデジャネイロ五輪に男子マラソン代表として出場する選手が出てくるかもしれない。期待しようではないか。

レース前にやっておきたい動的ストレッチ

 読者の中にも、様々なマラソン大会に出場する人がいるだろう。しかし、スタートは緊張して体も固くなってしまうものだ。また、出場した人なら知っているかもしれないが、今回の話に出てきた東京マラソンでは、申告したタイム別に選手たちを区分け(ブロック)して、ブロックごとに時間差で出発していく(ブロックスタート)。区切られた場所(スタートブロック)での待機時間が長く、その間は寒さに耐えることになり、余計に体が固まってしまう。

 そこで、スタート前に、青学の選手たちもやっている「動的ストレッチ」で十分な準備をしておこう。練習前に行うとよい動的ストレッチを紹介した前回に続いて、今回はレース前にお勧めの動的ストレッチを紹介しよう。

サイドリフト
重心移動をしながら片脚をリズミカルに引き上げる動的ストレッチ。(1)つま先を外側に向けて、脚を左右に大きく開く。腰を少し反らして落とし、手は太ももの上の方に置く。しっかり足を開いて、背中が丸まらないように注意する。(2)片方の膝を胸に向けて引き上げながら、反対の脚を伸ばして、重心をその脚の方へ移す。同時に、上げた脚と反対の腕の肘を曲げる。上げた脚を下ろして元の姿勢に戻る。これを片側20回繰り返し、反対側も同じようにする。
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ニーアップ
膝をしっかり持ち上げ、走っている時と同じように動作する動的ストレッチ。(1)脚を肩幅に広げて立ち、走る時と同じように片足を一歩分、後ろに引く。引いた側の腕は肘を曲げて上に。(2)後ろ側にある脚のつま先で地面を蹴り、その脚の膝を上げる。同時に、上げた脚と同じ側の腕を下に下ろし、反対側の腕を上げる。片側20回繰り返してから、反対側も同じようにする。
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股関節回し
(1)肩幅に脚を広げて、片脚を1歩分後ろに引く。(2)後ろの脚の膝を外側に開き、太ももが地面と平行になるくらいの高さまで膝を持ち上げる。(3)ハードルを越えるような感覚で膝を前に回す。片側を20回連続して回したら、反対の足も同じようにする。
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中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん
フィジカルトレーナー/米国スポーツ医学会認定運動生理学士
中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん 1971年生まれ。日本では数少ない肉体面と精神面の両方を指導できるトレーナー。卓球の福原愛選手など日本のトップアスリートだけでなく、高齢の方の運動指導も行う「パーソナルトレーナー」として活躍。日本各地での講演も精力的に行っている。近著に「青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ」(徳間書店)、「世界一やせる走り方」(サンマーク出版)など多数。
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