インフルエンザの陰で増える溶連菌性咽頭炎に注意!
年明け後、急激に増加中
高橋義彦=医学ライター
インフルエンザのような症状で始まる「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」(以下、溶連菌性咽頭炎)が、今年に入って急激に増加している。溶連菌性咽頭炎は主に子どもがかかる感染症だが、大人にも感染する。リウマチ熱、急性腎炎などの合併症をきたすこともあるため、咽頭炎といっても侮れない。
国立感染症研究所が2016年2月9日に発表した感染症発生動向によると、溶連菌性咽頭炎は年明け後の第1週から増え続けており、第4週(1月25~31日)には全国で1万人を上回る患者が報告された。全国約3000の定点医療機関当たりの報告数は、過去10年の同時期の中で最も多い3.36人となっている(図)。これは、過去5年間の同時期平均の5倍強に相当する。
都道府県別にみると、山形県(8.87)、鳥取県(8.37)では、警報開始基準値である定点当たり8.0人を超えた。静岡県(7.19)、北海道(6.18)、福井県(5.14)の増加も目立つ。さらに、首都圏でも埼玉県(3.96)、千葉県(3.78)、東京都(3.30)などで、流行が懸念される状況にある。東京都では、中央区、江戸川区がすでに8.0以上に達している。
38℃以上の発熱、咽頭発赤、イチゴ舌が典型的症状
溶連菌性咽頭炎は、「A群溶血性レンサ球菌」(溶連菌)という菌が上気道に感染して起こる咽頭炎だ。この菌は、とびひなどの化膿性皮膚感染症の原因菌としても知られている。
溶連菌性咽頭炎の典型的な症状は、2~5日の潜伏期間の後に現れる38℃以上の発熱、咽頭の発赤、舌に赤い小さなブツブツが多数出るイチゴ舌。しかし、これらの症状は、インフルエンザをはじめとするウイルス感染症でもしばしば現れる。
むしろ咽頭や口蓋垂(のどちんこ)の周辺に点状の赤い小さい発疹や小さな出血斑(内出血)がみられた場合は、溶連菌性咽頭炎の可能性が高いと言えそうだ。
患者は学童期の子どもが中心だが、乳児や成人もかかる。乳児や成人の場合は典型的な症状を示すことが少ない。
流行時期は主に冬季で、インフルエンザの流行時期と重なる。初期症状が似ていることもあり、インフルエンザと思い込む人も多いようだ。
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- 抗菌薬を飲みきらないと合併症の恐れも