猛威をふるうジカ熱、日本での流行の危険性は?
感染しても8割が無症状、気付かぬうちに国内に持ち込まれる恐れ
塚越小枝子=フリーライター
中南米を中心に、蚊が媒介するジカウイルス感染症(ジカ熱)の流行が広がっている。ブラジルではジカウイルス感染症との関連が疑われる小頭症の子どもが多数生まれ、2016年2月1日、WHO(世界保健機関)は小頭症およびその他の神経障害の集団発生に関して緊急事態宣言を発表した。これを受けて国立国際医療研究センターと国立感染症研究所が2016年2月9日に共催した報道関係者向けセミナーより、知っておきたい日本の現状と対策についてまとめた。
ジカウイルスってどんなウイルス?
ジカウイルスは、フラビウイルス科フラビウイルス属に属する病原体。1947年にアフリカ・ウガンダのジカ森で見つかった。
同じフラビウイルス属にはデングウイルス、日本脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、黄熱ウイルスなどがある。
ジカウイルスの感染経路は?
主にネッタイシマカやヒトスジシマカ(ヤブカ)が媒介する。ヒトスジシマカは日本にも生息する。ジカウイルスを持った蚊に刺されることで感染する。ほかに、母体から胎児への感染も複数報告されている。輸血や性行為による感染が疑われる事例も報告されているが、関連はまだ明らかになっていない。
ジカウイルスに感染するとどうなるの?
感染すると2~12日(多くは2~7日)の潜伏期間の後に発熱する(多くは38.5℃以下、発熱がないこともある)。また、全身の皮疹、結膜充血が特徴的。関節痛、頭痛、目の奥の痛み、筋肉の痛み、関節の腫れ、血小板減少などを伴うこともある。大半は重症化することなく、数日程度で回復する。感染者のうち発症するのは約2割で、不顕性感染(感染しても症状が出ないもの)が約8割。
ジカ熱とデング熱の見分け方は?
両者は原因ウイルス自体は違うが、発熱などの症状が似ており、デング熱の流行地域の多くでジカ熱も流行しているため、混同される例もあると見られる。臨床症状としては、デング熱が高熱で熱が下がってくるころに皮疹が出るのに比べて、ジカ熱は発熱の程度が低く、早期から全身に盛り上がった皮疹が出ることが多いという。
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