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ハーバード大研究者が語る、男女の妊娠力を高める食生活の6つの法則

 福島安紀=ライター

魚と葉酸はカップルで積極的にとりたい

 3つ目の植物性たんぱく質は大豆製品、ナッツ類などからとれる。「減らしたほうがいい動物性たんぱく質は、牛肉、豚肉などの赤身肉と加工肉です。魚はむしろ増やしたほうが、妊娠可能性が高まります」(チャヴァロ氏)

 前述のEARTH研究(*5)でも、月1回程度しか魚を食べない女性の生殖医療による出産成功率は34.2%だったのに対し、週2~3回食べる女性では47.7%と明らかに高かった。

 4つ目の葉酸はビタミンBの一種で、厚生労働省も妊娠の可能性のある女性には、神経管閉鎖障害のリスク低減のために、サプリメントで1日400μgを摂ることを薦めている。EARTH研究の結果では、食事からの摂取に加えて葉酸サプリメントを1200~1500μg補充している米国人女性は、葉酸の摂取量が1日400μgの女性に比べて生殖医療による妊娠成功率が高かった。血液中のビタミンB12濃度が高いと生殖医療の妊娠成功率が高まることも分かっており、チャヴァロ氏は、葉酸800μg以上とビタミンB6、B12の入ったマルチビタミンサプリの摂取を薦めている。

 葉酸に関しては、女性だけではなく男性でも重要であることが最近の研究で分かってきた。EARTHスタディの一環であるチャヴァロ氏らの研究(*6)では、女性の摂取量には関係なく、パートナーの葉酸摂取量が400μg増えると妊娠期間が平均2.6日長くなり、早産リスクが下がった。動物試験では、パートナー男性の葉酸摂取量が、女性の胎盤の脈管構造の発達に関係し、妊娠高血圧症や早産を抑える働きをしていたことも確認されている。

 ただし、厚生労働省は、「日本人の食事摂取基準2020年版」で葉酸サプリメントの1日の耐容上限量を男女とも18~29歳と65歳以上は900μg、30~64歳は1000μgに設定しているので、注意したい。耐容上限量は、それを超えると過剰摂取による健康被害のリスクが0ではないことを意味する。

 さらに、6つの法則には含まれていないが、排卵障害や不妊との関係が注目されている微量栄養素は、ビタミンDだ。生殖医療を受けている100人の米国人女性を対象にしたチャヴァロ氏らの研究(*7)では、血中ビタミンD濃度が高い人のほうが出産成功率が高かった。ビタミンDは、キノコ類やサケ、青魚などの食品からとる方法のほか、日光を浴びれば皮膚で合成できる。

 チャヴァロ氏は、「ビタミンDが含まれる食品は限られるので、日光に当たってビタミンDを合成することが大切です。充足している人がサプリメントでビタミンDを摂取するメリットはあまりありませんが、ビタミンD欠乏症(血中ビタミンD濃度20ng/ml未満)の人はサプリで補充するとよいでしょう」と話した。

*5 Am J Clin Nutr. 2018 Nov 1;108(5):1104-1112.
*6 Reprod Biomed Online. 2019 Nov;39(5):835-843.
*7 Am J Clin Nutr. 2016 Sep;104(3):729-35.

太りすぎだけでなく、痩せすぎもダメ

 また、砂糖を大量に含む炭酸飲料や清涼飲料水は、肥満を招くだけではなく、血糖値の上昇が排卵を抑制し、精子の質の悪化につながる。

 6つ目の体重コントロールについて、チャヴァロ氏は、BMI(*8)18.5未満のやせ過ぎと肥満(BMI25以上)は妊活に悪影響を与えると指摘する。看護師健康調査ⅡやEARTH研究から導き出された妊娠に最適なBMIは米国人の場合20~24まで。男性の肥満(BMI25以上)は、出産成功率を低下させることも複数の研究で明らかになっている。

*8 BMI=体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)

 「日本人などアジア人は骨格が細いため、BMI19~23程度が最適と考えられます。体重や血糖値をコントロールして妊娠しやすい体を作るためには、1日30分程度の有酸素運動を続けることも重要です」(チャヴァロ氏)

 運動をまったくしていない人は、1日30分ウォーキングをするなど体を動かせば、糖尿病などの病気の予防にもつながる。一方、体操選手や長距離ランナーのような激しい運動とやせ過ぎは、生殖機能に悪影響を与えるので、避けたほうがいいそうだ。

 「残念ながら、これらの法則をカップルで忠実に守れば妊娠が必ず成功するかといえば、答えは『ノー』と言わざるを得ません。妊娠が成立する可能性を高める方法ではあるものの、これを食べれば妊娠するという食べ物はないからです。排卵障害、無精子症などの人は、生活改善とともに、生殖医療機関に相談してほしい。ただし、不妊治療の成績は米国でも頭打ちであり、年齢による卵巣予備能の低下を根本的に治療する方法はいまだに確立されていません。それでも、食や栄養、運動習慣の改善は、妊娠を希望するカップルが、自分たち自身で今日から取り組めることです。これらの法則は、長い人生を健康に生きることにもつながりますので、カップルでぜひ続けてみてください」とチャヴァロ氏は強調した。

 チャヴァロ氏が指摘するように、これらの法則は加齢とともに増える糖尿病や心臓病、脳卒中の予防にもつながる項目だ。「妊娠の可能性を高める法則」を実践して元気な赤ちゃんを授かり、自分たちの健康も守られれば一石二鳥と言える。

(取材・文:福島安紀/構成:黒住紗織=日経BP総研 ヘルシー・マザリング・プロジェクト/取材協力:細川忠宏=パートナーズ代表取締役)

ジョージ・E・チャヴァロさん ハーバード大学公衆衛生大学院栄養疫学准教授
ジョージ・E・チャヴァロさん 2006年ハーバード大学大学院博士課程修了(栄養疫学)。ハーバード大学附属ブリガム・アンド・ウィメンズ病院疫学研究者、ハーバード・メディカルスクール准教授。米国の大規模疫学研究「第2次看護師健康調査(NHSⅡ)」、「EARTH研究」を実施し、栄養疫学の観点から病気や不妊の要因研究を行う。『妊娠しやすい食生活 ハーバード大学調査に基づく妊娠に近づく自然な方法』(日本経済新聞出版社:原著『The Fertility Diet』)の著書の一人。

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