インフルエンザワクチンは打たない方がいい?
増谷彩=日経メディカル
昨年末、筆者は友人から突然「インフルエンザワクチンは打たない方がいいって本当?」という質問をLINEで受け取った。彼女は現在妊娠中で、病院でインフルエンザワクチンの接種を勧められたが、ネットで調べたところネガティブな情報ばかり出てきて不安になったのだという。
「だって調べれば調べるほど陰謀論が出てくるんだもん」と彼女が驚きの発言をするので、試しに彼女が使用した検索エンジンYahoo!の検索窓に「インフルエンザワクチン」と打ち込み、検索してみた。
すると、厚生労働省の「インフルエンザQ&A」よりも上位に、インフルエンザワクチンの接種をやめようと訴えるウェブページが出てきた(図1)。漠然と疑問を持ってインターネットで検索してみた人が、真っ先に目にするのがこのような情報だとは…。筆者は今回初めて知ることになった。
「~はいけない!」記事は力強く分かりやすい
インフルエンザワクチンを否定する趣旨の文章は、断定調で分かりやすい。はっきりと「~は嘘」「絶対に~してはいけない」「~は常識」と説明している。それではと出典を見てみると、数十年前の発言だったり、現在では否定されている内容だったりする。
一方、エビデンスなどを紹介しながらインフルエンザワクチンを肯定している場合は、彼女にとっては言い訳がましく感じるのかもしれない。結論も「~な可能性がある」とか「~と考えられている」とかいまいち煮え切らない……と思ったのかもしれない。
しかし、打った場合も打たなかった場合も多少のデメリットが存在し、「インフルエンザに絶対にかかりたくない!」という要望を満たす手段は今のところないという事の性質上、どちらのリスクを取るかは自分で判断するしかない。
さて、彼女の疑問に正確に答えるためには、ワクチンの原株と製造株と流行株の一致率の話や集団免疫の話など膨大な情報提供をしなければならないかもしれないが、そんなに情報を与えられても処理に困ることが想像される。
「気になることは主治医に聞いてみてね」と前置いた上で、「感染自体はワクチンでは防げないけど、発症を抑えたり重症化を防げる可能性がある」こと、「特に重症化しやすい妊婦や高齢者などは接種が望ましいとされている」ことなどを伝えた(それでもメッセージアプリでやり取りするには十分に長文になった)。どの程度理解してくれたか本当のところは分からないが、「もう一度考えてみるね」と言ってくれた。
- 次ページ
- ワクチン接種が自閉症を招く?