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つらい花粉症に 効果続きやすい貼り薬も登場

花粉症対策は[「先手必勝」も重要

 及川夕子=ライター

 今年も、憂鬱な花粉症シーズンがやってくる。花粉症の3大症状といえば、くしゃみ、鼻水、鼻づまり。この時期、症状が少しでも楽になれば……と、薬で対処する人は多いが、「効き目が長く続かない」「副作用で眠くなる」といった声も聞く。

 そんな中、アレルギー性鼻炎の薬物療法として、新たに「貼る花粉症薬(処方薬のみ)」が加わった。花粉症の薬には様々な成分や剤形のものがあるが、貼り薬は世界初という。貼り薬にはどんなメリットやデメリットがあるのか。また、自分に合った花粉症薬の選び方や活用のポイントなどを、アレルギー性鼻炎に詳しい日本医科大学耳鼻咽喉科学教室准教授の後藤穣さんに聞いた。

スギ花粉の飛散(写真はイメージ)

働く世代の花粉症では、重症の割合が多い

 アレルギー性鼻炎のうち、花粉が抗原(原因物質)となり花粉が飛ぶ季節にだけアレルギー性鼻炎の症状が現れるものを「花粉症」という。近年では、ダニやペットの毛などによる通年性アレルギー性鼻炎と花粉症の両方を持つ人や、複数の花粉に反応するケースも増えている。

 後藤さんによると、アレルギー性鼻炎の中でも、重症例が多いのが花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)だ。また、スギ花粉症患者の重症度を年齢別に調べたデータでは、20~39歳で「重症/最重症」の割合が最も多く約6割、40代で5割超と、働き盛りの人に重症度の高い患者が多いことが分かっている(*1)。

 花粉症によるくしゃみ、鼻水、鼻づまりといった症状は、抗原(原因物質)が鼻腔に入ることで、肥満細胞がヒスタミンやロイコトリエンといった化学伝達物質を放出することから引き起こされる。ヒスタミンはくしゃみや鼻水を、ロイコトリエンなどは血管を刺激して鼻づまりを起こすと考えられているが、どんな症状が強く出るかは、個人差がある。また、繰り返し抗原が入ると、症状が強くなり慢性化してくる。

 花粉症の治療法として、一般的に多く用いられているのは飲み薬や点鼻薬などの薬物療法だ。近年、レーザー治療、根治的な治療法としてアレルゲン免疫療法(舌下免疫療法などがある)などが普及し、選択肢は広がっているが、手軽かつ即効性があるという点で、花粉症の症状緩和に薬の果たす役割は大きい。

眠気が少ない花粉症薬は?

 花粉症で使われる主な薬剤としては、化学物質遊離抑制薬(肥満細胞からの化学物質の放出を抑える)や抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬などの抗アレルギー薬、ステロイド点鼻薬などが挙げられる。さらに、抗ヒスタミン薬は、第1世代、第2世代に分類され、いくつもの種類がある。

 ここでまず押さえておきたいポイントは、「現在、スギ花粉症の薬物療法で使われる治療薬としては、より眠気が少ない『第2世代抗ヒスタミン薬』、その中でも集中力低下などの鎮静作用がより少ない『非鎮静性』のものが中心となっている」(後藤さん)ということだ。その理由として、より新しい第2世代抗ヒスタミン薬は、第1世代の欠点とされた副作用(眠気、口の渇きなど)が軽減されていることや、抗ヒスタミン作用に加えて抗アレルギー作用を持ち、鼻づまりにも効果が期待できることなどが挙げられる。

 また、適切な薬剤を選択する上では、症状だけでなく重症度も重要であるが、第2世代抗ヒスタミン薬は、軽症から重症まで幅広く使用可能な薬剤であることが、ガイドラインにも記載されている。

 「『治療薬では非鎮静性抗ヒスタミン薬が中心になっている』ことを強調したのは、医師によっては、『使い慣れている』『強い効果・即効性』といった理由で、眠気が出やすい第1世代や、非鎮静性ではない第2世代の抗ヒスタミン薬を、まだ処方しているケースが少なくないからです。また、市販薬においても、まだ鼻炎薬の8割程度が、眠気が出やすい薬となっている。こうした現状は少しずつ改善していかなくてはならないでしょう」(後藤さん)

*1 Gotoh M,et al.Allergol Int. 2013;62(2):181-9.

 後藤さんは、「花粉の時期くらい、多少の眠気が出ても仕方ないのではと言う医師もいるが、眠気がより出やすい薬は、安全性や作業効率の低下などに注意して処方する必要がある。また、第1世代の抗ヒスタミン薬は、睡眠の質や学習能力が低下しやすいことが懸念されるといった報告もある。働き盛りのビジネスマンには、比較的眠気が出にくい第2世代の抗ヒスタミン薬が適切だろう」とアドバイスする。今の薬が合わない、眠気が出やすい、効き目が弱いなどと感じていたら、医師に相談してみるといいだろう。

皮膚に貼る花粉症薬は、効果の持続が最大のメリット

 2016年の鼻アレルギー診療ガイドラインでは、理想的な抗ヒスタミン薬として「即効性があり効果が持続する」「副作用(眠気、作業効率の低下など)が少ない」「長期投与ができる(安全性)」「投与回数が1日1、2回でアドヒアランス(*2)が良い」の4点を挙げている。

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 こうした条件のもと、2018年4月に発売されたのが、世界初の経皮吸収型アレルギー性鼻炎治療薬「アレサガテープ」だ。第2世代抗ヒスタミン薬に分類される「貼る花粉症薬」だ。本格的な花粉の飛散時期を初めて迎えるため、今季から本格的な活用が始まる。貼付薬とは皮膚に貼りつける薬で、有効成分が皮膚から吸収されるしくみ。内服薬とは代謝経路が異なるため、特に次のようなメリットがある。

  • 皮膚吸収であるため、胃腸・肝臓に負担をかけずに済む
  • 薬効の血中濃度がフラットに安定するため、効果が持続することが期待できる

 ただし、同じ場所に続けて貼ると、かゆくなったり赤くなったりしやすいので、貼る場所を毎日変更するなどの工夫が必要だ。

 「貼る薬は、皮膚からの吸収でじわじわと血中に浸透していくため、効き目が安定し症状が変化しにくいという利点があります。『1日1回の内服薬では、朝飲んだら夕方に効き目が落ちる気がする』といった場合に、医師に切り替えを相談するのも一策かもしれません。また、ほかの抗ヒスタミン薬と比べて眠気がより抑えられたり(眠気が起きないということではない)、肌に貼るので、内服薬と違って貼り忘れに気付きやすいなど、使い勝手の面でもメリットを感じる人は多い。こうした貼る薬ならではの特徴は、アドヒアランスの向上につながるのではないでしょうか」(後藤さん)

先手必勝!薬を使うタイミングは花粉が飛ぶ少し前から

 つらい花粉症シーズンを楽に乗り切るには、効き目に優れた薬剤を使うだけでなく、薬剤を使うタイミングも重要であることをご存じだろうか。

 まず、抗ヒスタミン薬などは、使い始めてから効果が出るまでにタイムラグがあることを押さえておきたい。また、花粉症では、繰り返し花粉を吸い込んでいるうちに、炎症が進み、症状が悪化する。症状がひどくなってから薬を使うのでは、症状が改善するまでにより多くの時間がかかってしまう。よって、花粉が飛ぶ前から薬での治療を始める(初期療法)ことが、シーズンを楽に乗り切る何よりのコツだ。そうすることで、症状が出る時期を遅らせ、ピーク時の症状を軽くすることができるという。

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 2019年は、広い範囲で例年より花粉の飛散量が「やや多い」との報告もある。早い地域では2月中旬から飛散開始となるため、そろそろ今年の花粉対策をどうするか、検討を始めよう。

*2 アドヒアランスとは、患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること。「アドヒアランスが良い」とは服薬状況が良いことを意味する。

(図版作成 増田真一)

後藤穣(ごとう みのる)さん
日本医科大学耳鼻咽喉科学教室准教授
後藤穣(ごとう みのる)さん 日本医科大学医学部卒業後、同大学耳鼻咽喉科学講師、同大学多摩永山病院病院教授などを経て現職。専門は、アレルギー性鼻炎、花粉症。日本耳鼻咽喉科学会認定耳鼻咽喉科専門医・専門研修指導医、日本アレルギー学会認定アレルギー指導医。