『究極の食事』著者が語る、「体に良い食品」の見極め方
エビデンスレベルが低いのは経験談、最強はメタアナリシス
村山真由美=ライター
「白米と糖尿病には関係があるとされています。日本人の研究(*1)では、男性では、1日のご飯の量が316~420gのグループは、315g以下のグループに比べ、5年以内に糖尿病になるリスクが24%高くなり、それ以上増えてもあまり変わりませんでした。一方、女性の場合、ご飯の量と糖尿病リスクの関係はもっとシンプルで、白いご飯を食べる量が増えるほど糖尿病のリスクが高くなりました」(津川さん)
茶碗1杯150~160gとすると、1日2杯くらいから糖尿病のリスクが上がり始めると考えてよさそうだ。「皆さんが想像しているよりも少ない量から、糖尿病のリスクが上がり始めるということが分かります」と津川さん。
また、「茶色い炭水化物は健康に良い」とは言っても、がんについては、リスクを下げることがはっきりしているのは大腸がんだけで、乳がんや胃がんなど、他のがんについては分かっていないという。「全ての病気のリスクを下げる食品はあまりなく、『〇〇にはいいけど、〇〇にはそれほどよくない』というものがほとんど。何にでもいいという情報は疑いの目で見たほうがいい」(津川さん)
赤い肉はおそらく発がん性がある
次に設問(2)のステーキ。ステーキはたんぱく質が豊富なうえ、揚げたりしていないためヘルシーな感じがするが、2015年、WHO(世界保健機関)の専門組織、国際がん研究機関(IARC)が、「加工肉は発がん性があり、赤い肉はおそらく発がん性がある」と発表した。
加工肉とはハム、ソーセージ、ベーコンなど、赤い肉とは牛、豚、羊、馬などの肉だ。赤い肉は一般に脂が少ないという意味で使われる「赤身の肉」とは意味が異なり、見た目が赤い肉を指すため、霜降り肉も含まれる。一方、鶏肉は白い肉とされ、赤い肉には含まれないため、動物性たんぱく源としては鶏肉や魚をとるといいそうだ。
「赤い肉は動脈硬化や大腸がんのリスクを上げることが分かっています。以下は、日本人の研究ですが、女性では、赤い肉を最も多く食べるグループは、最も少ないグループに比べて48%結腸がんになる確率が高かった。男性は統計的に有意ではなかったものの、赤い肉を多く食べるほど結腸がんのリスクが高くなる傾向が見られました(*2)。赤い肉を多く食べている人は太るという観察研究もあります」(津川さん)
豆類は血圧、コレステロール、中性脂肪を下げる
最後は豆類だ。「大豆は日本では昔から健康にいいと言われていますが、大豆を含む豆類は血圧、コレステロール、中性脂肪、血糖値を下げるというメタアナリシスがあります。がんについては、乳がん、大腸がん、前立腺がんのリスクを下げる可能性が報告されていますが、あまり研究は多くなく、まだはっきりとは分かっていません。大豆や豆腐を食べていた人はやせていたという観察研究もあります」(津川さん)
つまり、健康に悪いことが明らかな赤い肉の代わりに、大豆製品を食べるという手もあるわけだ。
「私たちは1日3回何を食べるか選択します。毎日の小さな積み重ねが、確実にあなたを病気から遠ざけたり、近づけたりしています。食事に関する正しい知識を持ち、もう一段上の健康を手に入れてください」(津川さん)
(図版作成 増田真一)
カリフォルニア大学ロサンゼルス校内科学助教授、医療政策学者
