成人男性も要注意、おたふくかぜが全国流行の兆し
首都圏を含め、正月明けに激増
高橋義彦=医学ライター
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)が全国的に流行の兆しを見せている。
国立感染症研究所が2016年1月19日に発表した感染症発生動向によると、1月4~10日の1週間(第1週)に全国で4000人近い患者(3771人)が報告された。2014年、2015年の同時期と比べると、8倍以上になる。
定点医療機関(全国約3000カ所)当たりの報告数は1.2。1.0を超えたのは2011年7月以来で、過去10年の同時期と比べると、流行年となった2006年の第1週(1.44)や、2011年の第1週(1.37)に次ぐ高い数字だ。
昨年秋から患者が増加し、一部の県では注意報レベルに
今回のおたふくかぜは昨年(2015年)の秋頃からほぼ右肩上がりで増加を続け、冬至(12月21日)前の第51週には1.0近くにまで達していた。その後、年始にかけて一旦減ったものの、正月三が日を過ぎて一気に増加した(下図)。
都道府県別に見ると、佐賀、宮崎、石川、沖縄では既に流行注意報基準値である定点あたり3.0を超えた。山形、福岡、熊本、北海道でも2.0以上、さらに埼玉、千葉といった首都圏でも1.5を上回っている。まさに全国的な流行につながる危険な状況といえそうだ。
主な症状は発熱と耳の下の腫れと痛み
おたふくかぜは、医学的には流行性耳下腺炎またはムンプスと呼ばれるウイルス感染症だ。主に、感染者の咳やくしゃみと共に運ばれたウイルスを吸い込むことによって伝播する(飛沫感染)。また、ウイルスが含まれる唾液などを触った手から口・鼻を介して感染することもある(接触感染)。潜伏期間は2~3週間とされている。
症状は最初、悪寒、発熱、頭痛、倦怠感など、風邪に似た症状が見られる。その後、耳の下にある唾液腺(耳下腺)が腫れてくる。両側が腫れる場合も、片側のみが腫れる場合もある。腫れは2日目あたりが最もひどく、外から触ったり、唾液や食べ物、すっぱい飲み物を飲み込むときなどに痛みを感じる。
通常は7~10日で腫れが引き、自然治癒する。特別な治療法はなく、必要に応じて解熱鎮痛薬、冷湿布などの対症療法を行う。ただし、10%以下の頻度で無菌性髄膜炎という病気の合併が見られる。症状は発熱、頭痛、嘔吐、けいれんなどで、治るまで2週間ほどかかるが、通常は後遺症が残るようなことはない。
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