その肩の痛み、五十肩ではなく「肩腱板断裂」かも!
50歳以上の4人に1人が起こす肩腱板断裂、超音波で素早い診断・治療が可能に
田中美香=医療ジャーナリスト
肩腱板断裂は、よくある病気なのになぜ放置される?
「腱板」とは板状の腱で、肩の関節を安定させる機能を持つ、4つの筋肉(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋)の総称だ(図1)。加齢によって腱板の強度が低下したり、転倒して衝撃を受けたりするうちに、腱板が切れてしまうことを腱板断裂という。骨折や捻挫のように原因が明らかなケガと違い、本人も気づかないうちに日常生活の中で自然に切れやすい。腱板が切れてしまうと、肩周辺の痛みのほか、腕に力が伝わらない、筋力が低下するなどの症状が生じてくる。
肩腱板断裂は、年をとればとるほど右肩上がりに増加し、図2の通り、50歳以上の4人に1人が起こすという報告もある。肩腱板断裂は、いつか誰にでも起こりうる、ごくありふれた病気なのだ。
だが、肩腱板断裂で顕著な痛みが出ても、整形外科を受診しない人が多い。その理由は、周りの人から、「加齢現象で痛いだけだから、放っておいても大丈夫。我慢していれば治る」という誤ったアドバイスを受けることが少なくないためだ。それに加えて、肩腱板断裂という病気自体を知らない人が多いことも影響しているという(*1)。日本人特有の、痛みやつらさを我慢することを美徳とする国民性もその背景にあるのではないか、とする見方もある。
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- 運動器エコーの進化で診断が容易に