“豚のレバ刺し”でE型肝炎が急増!
牛レバーの生食禁止を機に需要がシフト、報告数が2倍以上に
大西淳子=医学ジャーナリスト
市販の豚レバーの2~3%がHEV陽性か
豚レバーの何割くらいがHEVに感染しているのでしょうか。東芝病院の研究チームが2014年に報告したデータがあります(*3)。東京都品川区と港区内のスーパーや精肉店あわせて22店舗から生の豚レバーを260個購入、また、22店舗中の1店舗から生の豚大腸(白モツとして料理されます)53個を購入して、HEVの有無を調べたところ、豚レバー7個(2.7%)と、豚大腸1個(1.9%)からHEVが検出されました。
また、北見市の小林病院の矢崎康幸氏らが2001~2002年に行った調査でも、北海道の食料品店で市販されていた豚生レバー363 個中7個(1.9%)からHEVが検出されています(*4)。
海外で行われた同様の調査では、市販されている豚レバーからHEVが検出される割合はさらに高いことが明らかになっています。
なお、清潔な環境で飼育されているSPF豚も、他の農場の豚と同様に、一部は生後1~3か月頃にHEVに感染しています。SPFは「特定病原菌不在」という意味であり、あらゆる病原体を持たないわけではありません。
十分な加熱時間は、中心部が75度なら1分
厚生労働省は、肉の中心部の温度が63度の状態で30分間持続する、またはこれと同等以上の加熱処理をすれば、HEVのみならずサルモネラや腸管出血性大腸菌、カンピロバクター(別記事参照)も感染性を失うとしています(*5)。たとえば肉の中心部の温度が75度であれば、その状態を1分維持すれば安全です。
塊肉の場合、中心が75度になるまでにかなりの時間がかかります。料理用温度計または肉用温度計といった、太い針のような形のセンサーがついている温度計を差し込んで中心温度を測定し、安全な調理時間を確認すると良いでしょう。
「肉は新鮮なら生でも安全」という認識は大間違いです。SPF豚にもHEV感染は発生しています。「新鮮であるほど、潜んでいる寄生虫も病原体も元気」と考えて、確実な加熱を心がけてください。
なお、牛レバー、豚肉の生食が禁じられて以降は、鶏肉の生食によるカンピロバクター感染にも注意が必要となっています。そちらについては、関連記事「鶏肉の生食で毎年500万人の食中毒!?」をご覧ください。
*4 Yazaki Y, et al. Sporadic acute or fulminant hepatitis E in Hokkaido, Japan, may be food-borne, as suggested by the presence of hepatitis E virus in pig liver as food. J Gen Virol. 2003;84(9):2351-2357.
*5 厚生労働省「豚のお肉や内臓を生食するのは、やめましょう」