“豚のレバ刺し”でE型肝炎が急増!
牛レバーの生食禁止を機に需要がシフト、報告数が2倍以上に
大西淳子=医学ジャーナリスト
E型肝炎になったら回復までに4~6週間かかる
E型肝炎は、E型肝炎ウイルス(HEV)によって引き起こされる急性ウイルス性肝炎です。HEVは豚などの生肉に含まれますが、潜伏期間が15~50日間(平均6週間)と長いため、どの食物が原因だったのかを特定することは容易ではありません。
発症すると、急な発熱、全身のだるさ、食欲不振、吐き気・嘔吐などが生じ、数日後に黄疸が現れます。ほとんどが4~6週以内に自然治癒しますが、重症になると回復に数カ月を要する場合があります。妊婦、特に妊娠後期の妊婦では重症化しやすく、致死率は最大で20%に達するといわれています。また、妊婦から胎児にも感染します。
通常は慢性化しませんが、免疫が抑制されている患者(臓器移植後の患者など)は、慢性肝炎になる可能性があります。
国内でE型肝炎を発症する患者は男性に多く、女性の約3.4倍です。死者数は年0~2人で、すべてが60 歳以上です。
この病気に対する直接的な治療法はなく、症状を軽くするための治療が行われます。
毎年15万人がHEVに感染?
肝炎を発症し、HEVに感染していることが明らかになった患者は報告されることになっていますが、実際には報告されない患者も少なくありません。また、HEVに感染しても30%程度は発症しないと言われています。自治医大の高橋雅春氏らが、2002~2007年の調査データに基づいて実際のHEV感染者の数を推定したところ、日本国内では毎年15万人(男性は10万8000人、女性は4万2000人)がHEVに感染していることが示唆されました(*2)。
E型肝炎の主な原因は豚や馬、イノシシ、鹿などの生食
国内では、HEVに感染している豚、鹿、イノシシ、馬などの肉や内臓を十分に加熱せずに、または意図的に生で摂取して感染、発症する患者がほとんどです。十分に加熱すれば感染は避けられます。
世界的には、衛生状態が悪く飲用水の管理が悪い地域で、HEVの感染が多く発生しています。生肉以外に、感染した人や動物の便で汚染された水や野菜にも注意が必要です。
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