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短時間高強度の運動「タバタトレーニング」で前がん細胞が減少か?

専門家に聞くHIIT研究の最前線

 伊藤和弘=フリーランスライター

 大腸がんはいきなりできるわけではなく、いくつかのステップがある。正常な細胞が、まずACF(前がん細胞)に変わり、これがポリープになり、ポリープががんになる。そして、日常的に強度の高い運動をしている人は、大腸のポリープが少ないことが分かっている(*3)。

 1985年に秋田赤十字病院の工藤進英外科部長(当時)がポリープを経ずにできる「陥凹(かんおう)型大腸がん」を発見したが、ほとんどの大腸がんはポリープからできる。そのため「ポリープが少なければ、大腸がんのリスクが低くなると考えて間違いないだろう」と田畑さんは言う。

 では運動によって、なぜ大腸のポリープができにくくなるのか?

 田畑さんによると、「メカニズムとして考えられているのはSPARC(Secreted Protein Acidic and Rich in Cysteine)という筋肉から分泌されるたんぱく質」の働きだ。

 運動すると筋肉でSPARCが作られ、これが血液を通じて大腸に運ばれる。このSPARCがACFのアポトーシス(細胞死)を誘導、つまりACFを殺す(*4)。その結果、ポリープができにくく、がんの発生も抑えられるという。田畑さんの研究から、タバタトレーニングによってSPARCが増えることも確認されている。

4週間、タバタトレーニングを続けたラットたちは……

 しかし従来、大腸がんの予防に有効であるというエビデンスがあるのはあまりきつくない中等度の運動だった。一方、タバタトレーニングの強度は極めて高く、わずか4分でもヘトヘトになる。「高強度の運動はストレスが大きいため、免疫力を高めないのではないかと思われていた」(田畑さん)という。

 しかし、タバタトレーニングは確かにきつい運動だが、短時間で終わることを考えると意外とストレスは大きくないかもしれない――。そう考えて田畑さんらは、実際どうなのかを調べるためラットを使った実験を行った。

 事前に大腸がんを起こしやすくなる薬を与えたラットを2群に分け、一方にだけタバタトレーニングを週4回やらせた。具体的には、体重の16%の重りを付けたうえで、20秒間の水泳と10秒間の休憩を12セット(6分間)行わせたという。

 4週間後、何もしなかったラットに比べ、タバタトレーニングを続けたラットに発生したACFは半分以下に抑えられた(*5)。タバタトレーニングによって前がん細胞が減ったのだ。

 あくまで動物実験にすぎないし、この結果だけで「タバタトレーニングは大腸がんを防ぐ」と断言することはできないだろう。しかし、その可能性が示唆されたことは確かだ。大腸がんが気になる人はまめに検診を受けるとともに、中等度の運動やタバタトレーニングを含め、定期的に運動することを心がけよう。タバタトレーニングは運動中に血圧がかなり高まる。また、関節に大きな負担がかかる場合もあるので、事前に医師に相談してから行いたい。

*3 Kono S,et al. J Clin Epidemiol. 1991;44(11):1255-61.
*4 Aoi W,et al. Gut. 2013 Jun;62(6):882-9.
*5 Matsuo K,et al. Med Sci Sports Exerc. 2017 Sep;49(9):1805-16.
田畑 泉(たばた いずみ)さん
立命館大学スポーツ健康科学部教授
田畑 泉(たばた いずみ)さん 1982年、東京大学大学院教育学研究科体育学専攻修士課程修了。鹿屋体育大学体育学部教授、国立健康・栄養研究所健康増進研究部長などを経て、2010年より現職。著書に『究極の科学的肉体改造メソッド タバタ式トレーニング』(扶桑社)など。

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